お茶にしましょうか

□Scene 10
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小テストのその点数は『0点』と赤く、大きく書かれている。

名前を見るに間違いなく、それは彼女のものだった。

回答欄は、見事な程に全て埋まっていた。

それなのに、その全てに誤りを表すバツのマークが、赤のインクで付けられていたのだ。

例え、勘だったのだとしても、全てを埋める彼女には、相変わらず頑張り屋なのだな、と感心してしまう。

しかし、そのようなことよりも、一番に驚かされたのは、意外にも彼女が勉強は不得手だった、ということだった。






俺も元々、勉強はどちらかと言えば、得意な方ではない。

だが、成績は標準のあたりである。

とは言えど、このままでは俺の希望する進路は厳しい、と担任から言われているところだ。

その状況を少しでも回避したい、それぞれ思うことは皆、やはり同じであった。

マネージャーを含めた3年生の部活メンバーで教室に居残り、勉強会を行っていた。

これを始めたきっかけは、メンバーたちの愚痴からだった。



「一人では、勉強が手付かずのままだ」「野球漬けの日々だったから、勉強の仕方がわからない」



正直、俺は大人数で集まってしまっては、逆効果だ、と思っていた。

しかし、なんてことはない。

予想を思い切り上回り、はかどってしまったのだ。

深海魚の君も誘おうか。

そのような考えが、一瞬過ぎったが、そもそもこのようなむさ苦しい場所など御免だろう。

そう思い直した。

女子が男の集団の中に入り込むなど、そう出来ることではない。

しかし、マネージャーは別として。







Scene 10 赤丸と努力家
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