お茶にしましょうか
□Scene 9
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準決勝 2−1
9回裏 2アウト 1・2塁
うちは前者だ。
うちの野球部といえば大体、毎年二回戦目で詰まってしまうことが定番だった。
だが今は、あと一つ。
あと一つ、アウトさえとれば―
初めての状況に誰もが皆、すがるような想いでいた。
あと一つアウトをとれば、決勝戦なのだ。
内心では皆、興奮しているのだと思う。
メンバーの調子もモチベーションも、見るからに好調だ。
ただでさえ、今の時点でベスト4入りしている。
本来ならば、常連校の名が4つ並んでいるはずだった。
それなのに、ほぼ無名であるうちの学校名がそこに並んでいる。
夢の中で見る夢にも思っていなかった。
新聞にある高校野球の頁なんかでは、うちの学校は「ダークホース」呼ばわりだ。
このような結果を呼び寄せている理由とは、何か。
もともと打ちの打線は、積極的な者が多い。
いや、それもあるが結局、最後には自滅してしまう、いつもそんなものだった。
それよりも、こちらに注目するべきだろう。
たった一人の3年生投手だ。
1年生の頃から、共に朝晩と練習に励んできたが、彼の成長はチームの中でも著しかった。
入部当初、彼の投げるストレートは120km/秒とちょっと、というものだった。
それが今では、130km/秒を余裕で超える。
常連校にとって130km/秒超えることくらいは、当たり前のことなのだろう。
しかし、うちには全学年を合わせて、この3年生ただ一人しかいない。
非常に、貴重な存在なのだ。
彼は、本当に努力家だ。
俺が一番、見習わなければならない。
『信じていったって、駄目なものは駄目に決まっている』
過去に深海魚の君に向って、そう吐いてしまったことがあった。
しかし、そのような俺に彼女は呆れず、真剣に俺を諭してくれた。
それに加えて、だ。
これほどまでに身近なチームメイトから、実例を学んでいる。
人は人を、見限ることがよくある。
しかし、努力という者は人を、見限ることはない。
周りに存在する人たちから学び、俺が辿り着いた結論だ。
結論などといわずとも皆、わかりきっていることだろう。
だからこそ、皆が努力した自身よりも下回らない様、必死になれるのだ、俺も。
「落ち着いてな!」
「バッター集中っ!!」
「ひとつずつ、一つずついこう!」
「バックは任せろぉ!!」
セカンドを守る我らが主将が、先頭を切れば、それに続いて順に声かけを始めた。
俺もそれに続く。
「打たせてこい!」
俺の立つこの位置から、努力家なピッチャーへまで届けばいい。
そして、後になって気がついたが「打たせてこい!」とは、俺にしては随分、出過ぎたことを叫んでしまったものだ。
俺という奴は、高校で野球生活を2年半送ってきて、まさかとは思うが、今頃になってから変化が出てきたのだろうか。
それとも、もう一人の努力家の影響だろうか。
ふと頭に、彼女の顔が浮かんだ。