お茶にしましょうか
□Scene 8
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私は今の今まで、いつでも誰にでも自称「吹奏楽部」と名乗ってきました。
吹奏楽部の部員数は私を含め、1名です。
顧問の教師すらも居ません。
たった一人です。
その様なものを「部」などと呼んで良いものなのか、という誰に対してか、心苦しい部分がありました。
しかし、活動日数は週に6日です。
休日は日曜日のみ、なのです。
1日怠ると、3日分衰えると言います。
とにもかくにも、私は必死に練習を続けているのでした。
しかし、それでもこの「吹奏楽部」は、正式なものではないのです。
それならば、勧誘して、人を集めれば良いだけのことではないか、そうおっしゃる方も確かに幾人か、いらっしゃいました。
もちろん私も、何もせず、今に至るわけではございません。
たくさんの方々にお声掛けをしましたが、それはもう全滅でした。
それで、今のこの様(ざま)なのです。
もちろん、時期が来れば、他の部に紛れて勧誘もいたします。
現在、たった一人で居るからといって、別に人を呼ぶことを諦めているということでもないのです。
そして、欠点が私にあるということも知っています。
確信はありませんが、きっと私には協調性がないのでしょう。
それには、思い当たる節がいくつかあります。
例えば、授業で行った「リレー作文」などがそうです。
始まりは確か、先生が黒板に記したこの様な文章でした。
『よく晴れた昼間のこと、カフェのテラスにてコーヒーを飲んでいた。』
それから、生徒が一行ずつ、文を繋げてゆくのです。
その作文の内容は、いつしかこう変わっていったのでした。
カフェのテラスでコーヒーを飲んでいた青年は、偶然その場で出会った女性と連絡先を交換するのです。
そして、普通の日常を送っていた青年でしたが、数日後に女性から電話がかかってきます。
とうとう、私の番が回ってまいりました。
私に回ってきた文は、これでした。
『電話の向こうから聞こえる声は、泣いていた。』
私の前に書いた人というのは、いったいどんな意図をもって、電話口の女性を泣かせたというのでしょう。
私は、困り果ててしまいました。
悩みに悩んだ末、わたしはシャープペンを作文用紙の上で滑らせました。
『「私は、この星の者ではないのです。」』
それを次の席のクラスメイトへと渡すと突然、怒鳴られてしまったのです。
「この後をどう書けっていうんだよ!!」
私は、それにひどく怖じ気づいてしまい、その時間が終わるまで声を出せなくなってしまいました。
私がこんな台詞を書いてしまったのには、笑っていただけるかもしれない、この後少し書きやすくなるかもしれない、と気遣ったつもりだったのです。