お茶にしましょうか

□Scene 6
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彼女は無表情でしたが、どこかに陰を潜ませる様にそうおっしゃったのです。

少し恐ろしく感じましたが、完全なる悪い方では無いように思えました。



「勝手に落ち込んでいた私は、馬鹿でした。」

「全くです。こんな弱いやつが、私に釣り合うとでも?」



彼女は腕を組みながら、呆れた様子でした。

私から見た彼女の第一印象はたった今、覆されました。

全くというわけではありませんが、表情はそう多くありません。

そして、愛らしいお顔でありますのに、とても毒の様な舌を持っておられます。

しかし、全く悪い方ではない様です。

むしろ、私は彼女に好感が持てました。



「いろんな意味で安心いたしました。貴女のことも、江波くんのことも。」



ふん、と彼女は鼻を鳴らし、私から目を逸らしました。

しかし、構わないのです。

彼女の核となる部分に、触れることができた様に思っております。

まだまだ仲良くなることができる、そんな気がするのです。

余裕を持って、微笑むことが出来ました。

ふと江波くんを見ると、瞬きを何度も何度も繰り返していました。



「どうかされましたか?」

「いや…今、『江波くん(おれ)のことも』って…それって、その…」



何かを言いかけて、止めてしまわれた江波くんはどこか悩ましげでありました。

すると、マネージャーの彼女は如何にも気怠そうな様子で彼を見て、私にこう問いました。



「彼氏とか居るんですか?」



私は、決まりきったことの様に答えました。



「もちろん。」



そう言うと、江波くんは物凄い勢いでこちらを見たのです。

その表情は驚きの様な、絶望の様なよくはわからない、曖昧なものでした。

とにもかくにも、よくわからなかったので、彼は私の声を聞き逃した、と無理矢理に解釈をすることにしました。

そして、もう少し明確に答えることにいたします。



「愛人がいます。」

「あうぃじんっ?!」
「…あいじん…」
「あ、ああ…あいっ、あ…」



どうしてか、私の台詞に彼らは、豆鉄砲をくらった鳩の様でした。

今までずっと、うずくまっていた男子すらもです。

私は彼らの反応に、いまいち理解ができませんでした。



「ええ、ちょうどこれから会いに行くところです。」



ますます彼らは、動かなくなってしまいました。

こうしている間にも、私の愛しい相棒は4階の音楽室にて、真摯に私を待ち侘びているのです。






Scene 6 早過ぎる恋敵 2
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