お茶にしましょうか

□Scene 5
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ここ一週間、私の機嫌がとても宜しいのです。

さて、どうしてでしょう。

それは、憧れのあの人と毎日、挨拶を交わす様になったからです。

まさか、この様な間柄に成ることができるだなんて、思ってもいませんでしたから、毎日が夢心地で仕様がありません。

たくさんの人々が戯れる休み時間の廊下を歩き、今日は何処で会えるだろう、と胸を膨らませておりました。

そんなことを考えているそばから、私はよくよく見知った姿を見つけたのです。



「江波く…」



胸の高鳴りを押さえながら、私は駆け寄ろうとしました。

それなのに彼ときたら、すでに頬を真っ赤に染め上げ、親しげに女性に会話をしている様子でした。

私はあれ程楽しそうに話す江波くんなんて、初めて見てしまいました。

何について話しているのか。

いいえ、そんな事よりも何について話せば、江波くんはあの様に幸せそうな顔を見せてくれるのでしょうか。

その光景を目にしてまでも私は、意地の汚いことを考えておりました。

そして、当たり前の様に恋だの愛だのいう乙女の心は、悲しみに打ちひしがれたのでした。

しかし、少し間が間が空けば何てことはありません。

一時だけ気力を無くした乙女の心は、しばらくすれば活発に働き出していました。
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