内実コンブリオ

□第3章*第3話
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ある日のお昼休憩。

どこでお弁当を食べようか、と悩んでいた。

別にどこでお弁当を食べようと味が変わるわけではないのだが、とにかく早く食べたいわけだ。

それもこの弁当の中にいる秘密兵器のせい。

正体はウインナーだ。

しかし、ただのウインナーなんかではない。

実は自分、咲宮 華には3歳から今に続く大好きなものがある。

それは戦隊ヒーロー、仮面ライダーなどのテレビヒーローだ。

あの素敵なマスクのフォルム、素敵な胸板、立ち姿…ああ!

もはやこの感情は中毒かもしれない。

携帯の待受画面も約20年前に放送されていた〇ーレンジャー。

ああ…なんて素敵なの。

飽きることは今までにも、きっとこれからもない。

失礼しました。うっとりしている場合ではない。

これ以上話しがそれてしまう前に修正しておこう。

要は弁当の中にいる物の正体についてだ。

その正体とは、ずばり戦隊ヒーローのウインナーなのだ!!

…あら?みなさん反応が少し薄くありませんか?

まあ、しょうがありませんよね。

20歳後半にもなった女子が、戦隊ヒーロー大好きだなんて。

気を取り直して、はやく食べる場所を探すとしましょうか。

あ、なんなら外のベンチで食べるのもありだ。

コンクリートの上に、一つだけあるベンチがある。

そこには何故だかあまり人が寄り付かないのを自分は知っている。

中で食べる人たちは3・4人のグループになって食べているから、その中へ1人で紛れるのは少し気まずい。

決めた、外に行こう。

職員用の裏扉を開けると、冷たい風が吹いていた。



「天気はいいのにな…」



秋独特のあれだ。

風がなければ暖かいのに、というやつだ。

今日の風はなんだか冷たいうえに少し強い。

でも、日なたにいればそれ程問題はなさそうだ。

ベンチを見つけると、先客がいた。

残念だけど他を探すか、そんな気分にはなれなかった。

そのベンチに座っていたのは、今会うには気まずくてしょうがない角野先輩がいたのだ。

先輩はただ何をするでもなく、ベンチに腕、足を組んで座っていた。

何をしているのだろう。

そうは思ったのだが、だからどうしようとは頭が考えようとはしない。

少し動揺しているから。

しばらく止まったままでいた自分は意を決して前に進んでいた。

恐くないのか、と聞かれれば思いっきり嘘になる。

先輩に話しかけたことで、弁当が食べれなくなってもこの際、構わない。

ただ一言謝っておきたい、それだけなのだ。
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