羊かぶり☆ベイベー

□Three sheep
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吾妻さんは私を見て微笑むと、本題のカウンセリングの準備に、手を動かし始めた。



「みさおさん、許してくれてありがとう」

「許すも何も、始めから吾妻さんには怒ってませんから」

「俺には怒ってないの?」

「はい。優柔不断な私自身に苛立っていたんです」

「そっか」

「だから、もう、気にしないでください」

「うん。ありがとう。本当に、みさおさんには驚かされる」

「え」

「さて、じゃあ相談内容を聞かせてもらいたいんですが……」



私の気になることは、吾妻さんによって遮られた。

吾妻さんが時々呟く言葉が、少し気になる。

でも、気になったところで、特に重要だとは思わないので、追求する訳ではないけれど。

私も改めて、ここへ来た目的を思い出し、姿勢を正す。



「お話を聞かせてもらう前に、確認させてもらいたいんですが。みさおさんの話してくれる内容を、メモに取らせてもらってもいいですか?」

「あ、はい」

「ありがとう。では、どんなことを相談したいのか、みさおさんのペースで良いので教えてください」

「はい」

「ちなみに、言いたくないことは、無理に言わなくて良いからね」

「わかりました」



私の第一歩が、始まろうとしている。

そう思ってしまうと、気が重い。

それでも、未来に起こることを思えば、ここはしっかりしておかないと、と真面目に思える。

それに、1人で出来ないなら、たまには他人を頼るのも1つの手段だ。

ここは後悔しないために、吾妻さんの力をお借りしよう。

ゆっくりと息を吸い込む。



「今回、ご相談したいのは……自分自身について、です」



思い切って言ったのに、吾妻さんは僅かに驚いている様だった。



「え、な、何ですか」

「や、ごめん。何でもない。続けて?」

「時折、そんな顔して! 何もないはず無いじゃないですか。気になります。教えてください。でなきゃ、気が散って話せません」

「ええ……俺、そんなに顔に出てる? 普段はそこまでじゃないはずなんだけどな」

「ずっと出てます。この部屋の前で会ったときから」

「おかしいな……」

「吾妻さん、もしかして疲れますか?急遽、私の予定を入れてもらったから……」

「それは大丈夫! 本当に気にしいだなぁ。いや、みさおさんの悩みって、てっきり彼氏さんのことなのかなって、考えてて」



吾妻さんは頭を掻く。



「吾妻さんの言うように、彼氏との一件があって、あれからいろいろと気付いたことがあったんです」

「気付いたこと?」

「あの日、店を出るとき、最後に尋ねてくれたでしょう?」

「俺が?」
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