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作者瑠衣の創作の原点は映画
とにかく心に響いた映画をただただレビューとして残していく場所です


あなたにとっての
忘れられない
作品はなんですか
◆やめろ行くなやめろ 


フューリー [SPE BEST] [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


最後の二十分、馬鹿みたいに画面にやめろと、訴えながら泣いていた

戦火の馬を彷彿させる冒頭、白馬が戦場を闊歩する
ブラピなのに、ブラピに見えない歴戦の曹長
信仰深い自らを神の道具とする兵士
荒い性格の戦車の修理、装填担当
皆の気持ちを汲みつつバランスをとる狙撃手
何も知らずに副操縦士に配属された若者

俺の隊は死なない
一人も死なせない

ただただ第三者感が漂うアメリカ軍視点からのドイツ戦
子供も兵士として送り込まれ、非国民は女の子さえ吊るし首にするナチスのやり方に憤怒しながらドイツ兵を殺戮する
移動中の奇襲に見舞われ、制圧した街では女がタバコ一箱で相手をする
そんななか、あるドイツ女性の家で静かなときを過ごす
ピアノと歌声、温かい飲み物
この作品のただ一瞬の平穏
それが、それが、ほんとうに、縞模様のパジャマの少年のシーンを彷彿させる
ああ、長くは続かないと安心させてくれない

なんといっても、ゼロダークサーティのようなクライマックスの大戦
たった一台の戦車で、ナチの大群と相対する
死なせない
聖書の一説を暗誦する

「だれを遣わそう。だれが、われわれのために行くだろう」
「ここに、私がおります。私を遣わしてください」

私を遣わしてください

やめろ行くなやめろ
誰も死ぬな
お願いだから
そう願わずに入られない作品だった
戦争もの、と括らずに観てほしい
ブラピも、トランスフォーマーの彼も凄みがあった
凄味が

2016/02/03(Wed) 01:03  コメント(0)

◆戒め 


ラスト、コーション [Blu-ray]
Victor Entertainment,Inc.(V)(D)


いつだったか、深夜の五郎ちゃんか真吾ちゃんのの映画特集で見たんですよね
ずっと気になっていましたがやっと観られました

ラスト
人間の七つの大罪の一つ、色欲
まさにその罪に対する物語
抗日派と親日派が対立していた時代
学生の愛劇団体に属した彼女は、標的であるイーの愛人として近づこうとする
一度は失敗した作戦は、三年後に再び実行される――

R18指定作品
正直、官能を学びたいなという想いもありました
しかし、逆に打ちのめされました
本当の官能とはこういうことなのかなと
美しく、醜く、激しく、緩慢に
そんな矛盾が入り乱れて、それがまた惹きつけられて
筆舌しがたい世界
呆然と見入りました
時計仕掛けのオレンジの官能シーンとはまた全然違う
そうですね
恋愛と一口に言っても、出会いや別れは数百億通り
ならば、官能もその通り
深み
それを学んだ気がします

指輪を巡る二人の無言の思いの工作が非常に胸に来ます
また、日本を海外目線から描いているものとして、興味深くもあります
ぜひ、深夜にご覧になってみてください
不倫
ここまで嫌悪を抱かなかった儚い不倫はありません

貴方は針で
私は糸
一度通せば
二度と離れることはない

2014/10/28(Tue) 00:17  コメント(0)

◆眠れる美女の秘密 


いばらの王 -King of Thorn- [Blu-ray]
バンダイビジュアル


カスミ、生きて

その言葉と共に目覚めたコールドスリープ実験のシズク
今の技術では治せないから未来に希望を託して眠る
夢みたいな科学だよね
これ一度でいいから取り上げてみたいんだけど、どうあってもハッピーエンドが思い付かない
愛する人みんな年老いてるか死んでる未来に一人きり
絶対嫌だ

でもこの作品はそうじゃない
目覚めたのは二日後
なのに世界が豹変してる

はじめはアメリカンスプラッタの王道で、サンダーなんとかとかいう映画を彷彿させる演出
またモンスターのデザインがサイレントヒル並みに綺麗なんだよね
メデューサって病気も美しいから儚さが増す
予想を次々裏切られるのは爽快だったなあ…
ARMSみたいな最後かと思いきや、「ああああ!!」って叫びたくなる謎解きに泣くしかない
いいね…
姉妹か…
素敵だな
ちょっと非現実を味わいたかったらお手に取ると良いと思う
正しくおとぎの夢の物語

2014/09/14(Sun) 01:35  コメント(0)

◆自分への恐れ 


+1[プラスワン] [DVD]
TCエンタテインメント


TSUTAYAだけ!に弱い
見るたび借りてしまう
なんだかレアな気がするんだろうね
そしてそのDVDには更なるTSUTAYAだけの予告が入っている
このプラスワンはその予告にやられた

自分に会えたらまずなにをする?

そんな、素朴で単純な疑問
ドッペルゲンガーに会ったらどうする?
それに対して一番面白い言葉が私の好きな漫画家が作中に現したことがある
「どっちがドッペルゲンガーなんだ?」
「そりゃあれだ……どっちだ?」
正にこの映画はその問答を示してくれた
しかし単なるパニック映画ではない
そこに混ざる策略が想像以上に面白い

主人公のデイビッドは彼女に失態をおかし、別れの危機に迫られてしまう
そこで彼は分身の方の彼女に復縁のチャンスを垣間見る
それに縋る彼には狂気すら感じる

登場人物により反応が様々なのがリアルでいい
ラストは原点に戻るようですっきりする
映画を娯楽と見たときには、最高にオススメですねー
謎解きを楽しみたい人には少し苛立たしい最後かもしれないけど、ぜひ苛ついてくださいな

似ている人ほどよく衝突するという
それを小説に用いることはあるけれど、正に自分に会うとどうなるのか
瑞希たちでそれぞれ試してみたい

2014/07/22(Tue) 02:01  コメント(0)

◆タイムトリップの快感 


幻影師 アイゼンハイム [DVD]
東宝


彼女と一緒にいたい……

ただそれ以外なにもいらない

失うものがない者は果てしなく強く美しい
全ての場面が絵画のように魅惑的で、あまりにリアルなタイムトリップの快感に酔いしれる
それにしても嫉妬するほど出来た脚本だ
あれに似ている
画家の……なんて映画だったか
父の画廊を受け継いでナチスの友人と入れ替わりをする画家の一家の、絵画の模写を巡った国家をかけての……シェイクスピアだ!!
シェイクスピアの陰謀、だったかな
あれに似た快感の最後だった
日本語予告ではショーシャンクの空にと比較している
どちらも名画だ
映画自体が一つのトリック
見破れないトリック

全てを欺いても
君を手にいれたい

最高だ
笑いながら泣いたのはソハ以来かな
世界にはまだまだこんな至高作品が沢山あるんだろう
伸びていくために
限界を越え続けるために
見せたい世界を描いていくために
世界に習わねばね

あなたもきっと
彼の御技に酔いしれる

しっかし警部役は素晴らしかった
ファンになってしまったな
ポール・ジアマッティ
他の作品も観てみよう
アイゼンハイムはキアヌに似てまた更に謎めいている
まだまだ語りたい一作だ

2014/01/23(Thu) 02:09  コメント(0)

◆BGMは口ほどに 


「イヴの時間 劇場版」 [Blu-ray]
角川映画


ものを言う

ロボット、アンドロイドが世界に普及したら必ず倫理問題が現れる
こんなにリアルに感じさせてくる作品は初めてだった
ロボット三原則
規則の裏の安心と不安
規律じゃまとめきれない感情

映像の中の距離感を際立たせる構造と照明の強調
そしてなにより音楽
リアルな映像の上に神秘的なBGM
だからかすっと入ってくる

何気なく突然涙が溢れてくる作品です
人の素朴な感情が、ほんの少しの変化が不思議な喫茶店の空気を揺らす
なにもかもが記憶の中みたいに淡くて儚くて美しい
ロボットものも一回は描いてみたいけど、これを観たら暫く無理そう……足元にも及ばない

2014/01/19(Sun) 18:35  コメント(0)

◆つまらない意地 


パンドラの匣 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル


終戦直後
人生の見方を変えた青年
一大決心と信じこんだために新しい自分に固執しすぎるつまらぬ意地
けどなぜか
彼は高尚さを纏っている

ヒミズ以前にも彼の傑作はあったのだ
まず感じたのがこれだ
仲里依紗と空気の奪い合いのような画は圧巻
主人公の語りの温度がまた秀逸で、不意打ちのような笑いには引きずり込まれるほど

見所を挙げよと言われれば一つ
ひばりの振り向きざまニヤリ
厭らしい笑み
思わず「こいつ……」と笑いが込み上げる

しかし……
彼はどうしてこうも画になるかね
素晴らしいね
本当に


やっとるか
 やっとるぞ

頑張れよ
 ようしきた

2013/11/28(Thu) 00:14  コメント(0)

◆気品ある狂人 


羊たちの沈黙 [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


サイコというジャンルにおいて未だに頂点にあり続ける作品
前々から興味があった
あちらのサイトの方々は知っているだろうけど、今"道化師は啼かない"という狂った世界を描いている
その参考にしたいと手に取った

この作品を選んだ理由の一つ
奇妙な囚人レクターの世界観の
高尚さ
人の心にズカズカ踏入り殺人をいとわない癖に礼儀を非常に重んじる
その由縁か殺人自体も鮮やかと賞賛したくなるほど無駄がなく楽しんでいる
人間観察もお手のもの
この手のサイコが好きな人には堪らない人物ではないだろうか
少なくとも私は彼の人格に惹かれてしまったほど

主人公の病的な美しさが際立つ中、着目すべきは殺人鬼ビルが性倒錯者の一面を見せるシーンは数分に満たないのにそれまでの嫌悪感を一掃…いや、忘れさせるほどに官能的
殺した女性の頭皮を被ってポップな曲を流しながら…
恐らくこの映画を観た人は何年経っても音楽に揺れながら自身を理想に重ねるビルの姿を鮮明に思い出せるはず

最近では悪の教典が斬新な登場で目を引いたが、レクターに勝る空気を纏える俳優はこれからも現れない
そんな確信すらしてしまうほど彼の役は完璧だった
余裕あるウィンクの爽やかさも

ただのバイオレンスじゃない
かといって頭を痛ませるほどの哲学でもない
サイコサスペンス
また役者が全員嵌まっているのが快感
題名の意味はぼんやりとしか掴めなかったけど、二時間一瞬も飽きない是非とも生涯手元に置きたい作品

"服"を大事にな
この台詞が消えない

2013/11/27(Wed) 01:20  コメント(0)

◆声を上げて泣くことに逆らえない 


ソハの地下水道 [DVD]
東宝


ナチス映画は数多く見てきた
キアヌのワルキューレ
縞模様のパジャマの少年
ミケランジェロの暗号
ヒトラー最後の12日間
サラの鍵
シンドラーのリスト
どの作品も、彼らの別れ、解放の場面では涙を止められなかった
けれど今回はもう波だった
抗えない嗚咽を久しぶりに味わった
声を上げて何度も泣いた
何度も

地下で息を潜めて暮らす彼らの劣悪な環境
その臭いまで伝わってくる描写
地上で簡単に奪われる命
命ってそんなもんなの、というほどナチスの虐殺には脈絡すらない
これは今別サイトで書いている主人公に込めている想いでもある
厭な言い方だけど、非常に勉強になった
またソハが素晴らしい
初めはユダヤ人から金を巻き上げようと協力し始めたのに、彼らの必死さに少しずつひかれていく
家族との絆を犠牲にして
友人すらも捨てて
限界状態の世界で
なんだかベッドの上で観ているのが恐れ多くなる
ぞくぞくする
これが現実だったんだと

R15は頷けるが、だからといって敬遠して欲しくない傑作
ユダヤ人に起きたこと
知っているつもりの収容所の悲劇
肌で感じるリアル感
毎日を怠惰に感じている人ほど観て欲しい
描かれているのは希望でも教訓でも美談でもない
這って、醜い姿で生に執着する人々
だからこそ見入ってしまう

一人ひとりのドラマを忠実に丁寧に暴いている

苛々や怒りも

だから、いい

ナチス映画では最高の部類に入るだろう
確実に
上に上げた他の作品もどれも良さがある
このサイトで出会った貴方に観て欲しい

2013/08/01(Thu) 02:52  コメント(0)

◆想像力の先 


ケイナ デラックス版 [DVD]
ジェネオン エンタテインメント


ハリウッドでは出せない世界観
その帯が告げる通り美しすぎる大木に生きる種族の物語

樹液を糧に神を崇めて生きる日々
でも神なんて存在しない
少女の疑問が種族を新しい場所に導く

FFのような映像美
でもヨーロッパ独特のカメラワークだからこそ全く違った新鮮味がある
質感もざわっと鳥肌立つほど非現実的
それなのに飲まれる
CGはここまで美しくなれるのに、どうし日本もアメリカも存在する素材ばかりのクオリティを高めて、こうした空想を突き詰めないのだろう
比較しようがない拘りよう

言いようのない浮遊感は快感そのもの
ファンタジーだからと軽視せずに手放しに愉しんで欲しい作品●●

2013/07/29(Mon) 01:33  コメント(0)

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