贈り物
□2015クリスマス企画
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紅と、紫野と、晃と、一夜と。
光沢のあるテーブルに膝をもたれかけて、ため息を吐く。
「今年はホワイトになりそうにないね」
「客足が減らずに済んで何よりだろ」
イブの雪。
アフターに出る若手は痛く嫌がっている。
タクシーを呼んでも相当の時間がかかるのだ。
廊下に戻り、吹き抜けからホールを見下ろす。
厳しい顔で数人と話している瑞希を見つけ、視線が止まる。
「大人になったと思うか」
「変わらないよ。出会ったころの僕に三年後追いつけるのかって言ったらあり得ないし」
「あの歳の時には伝説だったのにな」
今は歌舞伎町No.1の座は空牙に移ってしまっている。
それでもその次位にはついているだろうが。
売り上げを確認したとき、篠田は一つの時代が終わってしまったかのような喪失感を覚えたと言っていた。
当人としては特に誇りはなかったが、付いてきていた派閥のメンバーには後ろめたさを感じた。
戻る前の六年は荒れていたらしいが。
ガーデンが追い上げて、キャッスルが改装してから逆転して、スフィンクスは常に変わらぬ売り上げで位置を上下して。
新たに出店した勢力でも上位に食い込んできているのもニ三ある。
名義屋のように問題を起こす店も現れては消えた。
「ねえ、雅は今夜誰と過ごすの?」
グラスに指を這わせて来夏という女性が囁いた。
ここに来て以来のエースだ。
いつも三連のダイヤのイヤリングをしており、自信たっぷりの原色の赤いルージュを決めてくる。
歳は三十半ばらしく、類沢がトップかなどは気にせずに親近感からと指名してきた。
前に通っていた店は二年前に潰れたらしく、初めの会話はそれに対する嘆きからだった。
「一人ですよ。その方が気楽でいい」
「あら、優等生みたいな回答ね」
来夏は悪戯っぽくグラスを弾いて、背もたれに沈んだ。
美しく指輪で飾られた指を組んで、思案するように宙を見つめる。
「……じゃあどうしてホストに戻ったの」
「痛いところを尋ねらっしゃる」
「だってそうじゃない? 一人で生きられる男がわざわざ女と話さなくちゃいけない場に通うなんて滑稽よ」
「滑稽ね……しかしどうやら天職らしいので」
「ふふっ。その自信が好いのよね。雅にはナルシストでいてほしいわ」
「貴方もそのまま遠慮のない唇を閉じないでいてほしい」
「キスできないじゃない」
「出来ますよ」