03/22の日記

00:46
『死と乙女』@シアタークリエ
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3人の役者のみの台詞劇。
私は、台詞劇は観たことがあるが、役者3人だけで織り成される舞台というのはこれまで観たことがなかった。
終始、緊迫した空気感の舞台だった。


南米のある国で―
時代の流れの中、大空祐飛さん演じる"弱き存在"のポーリナは、かつて15年前にシューベルトの『死と乙女』が流れる中、おぞましい体験をする。
精神分裂症のような状態になってしまい、夫のジェラルドーと一緒にいても、闇の記憶を忘れることはない日々を送っていた。
ある日、夫の友人ロベルトが訪ねてくる。
ふと、彼が持っていた『死と乙女』のカセットをかけると、おぞましい体験がありありと蘇ってくる。
それにより、自分自身におぞましいことをした張本人は誰であるか確信し、復讐を決意する。

だが、復讐と言えど犯人を殺したい訳ではない。犯人に真実を語らせ、心の底からの赦しを乞う言葉を聞くことで、自分の心の闇から抜け出し、ジェラルドーと幸せになりたいと願う。

弱き者とされる存在だけが犠牲にならなくてはいけないのか。
また、男性と女性それぞれならではの考え方、目線の違いによる歪みは、本作において重要なポイントであり、一見目を伏せがちな命題が終始語られているようだった。


また、終演後は大空さんと、演出家の谷賢一氏との対談があった。
劇中のシーンをパロディ化し、椅子に拘束された状態の谷氏にスポットライトが当てられ、対談が開始する。

「だかしかし」を口癖のように発するらしい谷氏と役者達が役や舞台を作り上げていく中で、唯一女性である大空さんは、男性を1人称とした目線と、女性を1人称とした目線とでは違いがあると感じたと言う。まさに本作では重要なポイントを体感された訳だ。
その他に、ポーリナが電気ショックを与えられる劇中のシーンを、大空さんは夢で見て疑似体験をしてしまったそうだ。
電気ショックが30分と聞けばそれくらいなら何とか堪えられると思ったが、それ以上の時間と聞くとやはり堪えられないと思ったなどと夢について話し、会場の笑いを誘っていた。

最後に、本作で"弱き存在"として登場するポーリナは女性だが、決して「女性=弱い立場」として扱われているのではなく、「"弱き存在"を舞台上で表現する存在―ポーリナ」であって、「弱い立場の女性―ポーリナではないのだと言う観点に私は至った。

(1階最前列10番台にて観劇)


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