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□誰にも渡したくないから
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何時もの月曜日。
晴れていて気持ちのいい朝。教室では皆がわいわいと賑わいをみせている。
あたしも、ゆっくりと黒魔女さんドリルが出来るし・・。
今日は本当に気持ちがいいなぁ……
―――ある一つを除いて。
「京様、好きです!」
廊下にはぬいぐるみのしていないキラキラオーラ全開の大形くんと可愛い系の女の子が居た。
あたしの席は廊下側だから嫌でも聞こえて来た。
廊下側の人はじっと二人を見つめてる。
何も言わずに女の子に微笑む大形くん。
女の子は顔を赤くして大形くんを見つめてる。
そんな状況が、余計にあたしをイライラさせる。
―――ん?あたしなんでこんなにイライラしてるんだろ…。
何故だかとてつもないイライラ感に襲われて、胸の辺りがモヤモヤしていて、あたしは無意識にも首を傾げていた。
あたし、どうかしちゃった?
そんなことを考えながら、それでも答えは見付からなくて。
黒魔女さんドリルに目を移して解こうとするも、一向にはかどる気配はない。
……あぁ、もうッ!
「ありがとう」
聞きたくなーーーーーーーーいッ!!!
漸く口を開いた大形くんの声。
聞きたくなくて思わず耳を塞いだ。
でも、気になって仕方がない……。
そんな矛盾した気持ちで余計イライラが止まらない。寧ろ激しくなってゆく。
大体、何?
そういえば大形くんあたしをお后にするとか言って無かった?
ああ、やっぱり魔界を支配するという目的を失った今、あたしのことなんかどうでもいいんだね。
そうだよね。だって大形くんはもう魔界とは関わらないことにしたんだもんね。
今では大形くんは魔界とは関わらずに生きていくことに決め、魔界を支配するという目的を捨て、普通の人間に戻るという誓いをした代わりにぬいぐるみを外している。
普通の人間に戻った今、あたしという魔界の人間に近い黒魔女さんは大形くんにとって関わらなくてもいい存在に過ぎない。
寧ろ、普通の人間に戻るならあたしは邪魔かもしれない。
そんなことを考えたら、胸の辺りがズキズキと痛んだ。
「あ、ありがとうって………それじゃあ…」
「………うん」
次の大形くんの言葉を聞く前に、あたしは無意識に教室を飛び出していた。