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□甘い夢、痺れる現実。今の貴方はどちらですか?
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「黒鳥さん……」



ギシッ、とベッドの軋む音がする。



顔を上げると悲しそうに、そしていとおしむような顔をした大形くんと目が合った。


どきりと心臓が高鳴って、どうしたらいいか分からずに思わず目を逸らす。




「こっち、向いて?」




耳元で囁かれてひゃっ、と声を漏らせば見たことも無いような顔で可愛い、と呟く。



…この人は、本当にあの大形くんなの?



そんなことを思いながら目を見つめれば、



「疑ってるのかい?」



そう言って髪を撫でてくる。





「……ッ、大形く」



「動かないで、千代子」



不意に名前を呼ばれれば、かあっと顔が熱くなる。
また可愛いと呟いた大形くんに、今度は唇を奪われた。





「ッ!?ん、……んう」





角度を変えて何度も何度も深くてとろけるような口付けを交わす。



……っ変な感じ……。でも、嫌じゃない……





ぬるりと入ってきた舌があたしの舌と交わって
ぴくり、と思わず肩が震えた。






「―――っン」








あ、れ……?






ぼやけてきた大形くんの服の裾を引っ張ったと同時に、視界が明るくなった。




「おい!起きろバカチョコ!!」




「ん、あ……え?ギュービッド、……様?」





そこに居たのは紛れもなくギュービッドで。
レモン色の目がじっとあたしを見つめていた。



眩しくて目を瞑りそうになるもなんとか堪えて、ギュービッドを見つめ返す。


……あれ、大形くんは?







「夢………?」




しばらくぼうっとして窓から射す太陽の光に目を凝らしながら、徐々に覚めてきた意識。
さっきまで見ていた夢を思い出した。





「………ッ!!」





あ、あたしなんて夢見て………っ




思わず顔を真っ赤にしてしまう。
顔に熱が集中する。







「何寝ぼけてんだ、あたしのコートに涎付いたんだよ!弁償しろ!」


「よ、涎?」




コートにはべったりと涎が。

あんな夢を見ながら涎まで垂れ流していたなんて恥ずかしくて頭おかしくなりそう……。






「ギュービッド様、コートはごめんなさ――」




「千代子〜?大形くんよ〜〜?」




一階からママの声。






「え!?お、大形くっ……!!」





思わず、どしゃっと顔から転げ落ちた。














――とりあえず起きて着替えて一階へ。

その間もギュービッドが煩かったけどなんとか無視。





…って、!っていうか大形くん!!

なんで!!?なんで大形くんが家に来るのよ!!





さっきまであんな夢見てたなんて知られたら、生きていけない・・。


あたしは半分泣きそうだった。






ガチャリとドアを開けると、そこに居たのはぬいぐるみを付けた大形くんで。




「おはよう、だねぇ」



そう言ってにこりと微笑むものだからあたしもついにこりと微笑み返した。

とはいえさっきの夢のせいでギクシャクしてしまうけれど。





「あ――えっと、桃花ちゃんは?」


「桃は先に行ったねぇ」




そっか、とだけ返事をして靴を履く。
かかとを数回トントンして外へと出た。






「き、今日はいい天気だね」




ああ!なんかもうきまずいというか怖いというか恥ずかしいっていうか!!


とにかく色々な邪念があたしを襲う。






そんな中、ちょんとあたしと大形くんの手が少しだけ触れた。


あたしはビクッと思わず手を引っ込める。







「そんなに意識されると、困るねぇ」



「い、意識!?」




大形くんはくすりと笑った。




それからちゅ、と音がして頬に柔らかい感触。





「………は、」



「黒鳥さん真っ赤になって可愛いねぇ。写真に撮りたいくらいだねぇ」



「な、な、な!!!」






何するのよ!!


あ、あれ、もしかしてこれも夢?



なんて困惑するあたしの手を大形くんはぎゅうっと握った。








―――夢か現実。どちらにせよ、あたしが翻弄されるというのは決まっている。







end



*

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