その他
□珈琲にはミルクと砂糖を
1ページ/1ページ
――ああ、そんなに見つめないで
奪いたくなる。赤城さんの何もかも。
そんな風に考えてしまう僕は既に末期で。
こんなこと考えてるなんて知られたら変な顔されるに違いなくて。
赤城さんに抱くこの気持ちは他のSTメンバーへの気持ちとは違う、そういう部類のものだとは分かっている。
だからこそ、知られたくなくて。
でも、好きで。
苦くて苦くて仕方無いこの恋心を隠す事に必死になって。
―――僕は赤城さんを避けるようになってしまった。
「おい、ばかキャップ」
その日は何時も通りの日で、事件が解決してSTメンバーは直ぐに帰宅して行ってしまった。
僕は独りゆっくりとラボで一息吐こうと、缶珈琲をコップに注いでいると赤城さんがどこからともなく現れたということだった。
僕はぎくりとして、赤城さんから視線を逸らした。
それがもう、日常になっていた。
「なんですか?」
赤城さんから目を逸らすことで、天才の彼には何か疚しい気持ちや隠したいことがあるなんて直ぐに見破られる。
そんなの分かっていた。
分かってはいたけれど、逸らさずには居られなかった。
好きです。だから、
これ以上好きにならないように。
溢れないように、蓋をして。
赤城さんは案の定、目を逸らした僕を不審に思ったのか眉間にシワを寄せた。
「俺はお前に何かしたか、そうなのか。答えろばかキャップ」
――ああ、やっぱりだ。
「何もしてませんよ赤城さんは」
僕はにこりと微笑んでみせた。
それでも赤城さんは納得いく筈もなく僕を睨んだ。
「ならどうして目を逸らす?――それと、ずっと前からそうだった。お前は俺を避けている。気付かないとでも思ったか」
そうですよ。ずっと前から―――
好きですから、赤城さんの事が。
声にはせず心で思う。
僕を睨み続ける赤城さん。
ああ、いとおしい。
「何か言いたいなら遠慮せずに言え。何でも受け止めてやる」
そう言い放った赤城さんの目に迷いはなくて。
ああそうか、と気付いてしまった。
“気付かないとでも思ったか?”
違う、違います赤城さん。
ずっと、気付いて欲しかったんだ。
気付いて欲しくなくて避けていた。
けどずっと
気付いて欲しかったから避けていた。
そう思ったら、なんだか視界がぼやけてきた。
「……赤城さん」
「なんだ」
「……ッすき……です」
「………!」
僕は甘い珈琲を買わず、わざわざ何時もブラックを買う。
そこに、ミルクと砂糖をわざわざ入れる。
ブラック珈琲は僕で、ミルクと砂糖は赤城さん。
――こんな僕を、甘い気持ちにしてくれる。
そんな赤城さんが僕は好きだ。
―――赤城さんはとても、甘い。
end
(……俺もだ、ヘタレキャップ)
(…………!!)
*
―――――――――――
百合赤すき過ぎる。