その他

□甘く、解される
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ミーンミーンミーン……



蝉の鳴き声が響き渡るある夏の日のこと。



――ある一人の少年がカフェのパフェを一口、また一口と口へ運んでいた。


カフェの外のテラスで食べているため、溶けるのが早く今にでも溶け落ちてしまいそうだ。





「よぉー!ルークじゃん!!相変わらずデッカイパフェだね〜」


ルークと呼ばれたパフェを食べている少年は、自分の名前を呼んだ少年、アントニオに目を移した。



「どうした。買い物か」



「まぁそんなとこだな!ルークは?またカフェ巡り?」


「いや、翔悟を待っている。」



ルークはぱくぱくと口へフルーツを運んでいる。


ルークの言葉を聞いてアントニオは面白くなさそうな表情をした。




「ふーん。何で?」



「お前には、関係ないだろう」




ルークはアントニオの方をちらりとも見ず、パフェに視線を向け言い放った。


そんな態度のルークにアントニオのイライラは積もるばかりだった。






――――なんだよ、その態度……







「……オイラには言えないこと?」





その言葉にルークは眉をぴくりと動かした。





「お前に言わなければならない理由があるのか?」




目だけをアントニオに向けて言ったルーク。
その視線は痛い程アントニオの心に突き刺さった。




二人の間に、嫌な雰囲気が流れる。





どうしてそんなにも自分を遠ざけるような事を言うのか、アントニオには理解出来なかった。




「ルーク…オイラ何かした?」





アントニオは痺れを切らしてルークのスプーンを持つ腕をがしりと掴んだ。




「…………!」





視線が、交わる。








「……別に、何も…」





一瞬、動揺したその視線は呆気なく外されてしまった。
ルークはただ俯く。





アントニオはルークの顎を指で持ちあげ顔を近付けた。







「…オイラ、ルークに嫌われるようなことしたくないんだけど」




「何を………ッン!?!?」






音もせずに重なりあった唇。




ルークは思考が停止して大きく目を見開いている。



アントニオはそれとは対象的にどこか楽し気だった。




「―――――……」



ゆっくりと唇が離れる。







「へへッ、ルーちゃんの唇柔らかいんだな♪」



そうニャッと笑って行ってしまった。






ルークは呆然とアントニオの背中を見つめて居たが、はっと我に返りわなわなと顔を赤くして唇に手をやった。






「あ……の………馬鹿ッ!!!//」










「ん?どうしたんだよ、ルーク」




とことこと走ってきた翔悟にルークはキッ、と睨み付けた。






「あんの馬鹿が!!アイツのあのチャラチャラしたうざったい態度をどうにかしようと呼んだんだ!お前を!!なのに!何故アイツはあんなことを……ッッ!!」


「え、ちょっ、ルーク?あの馬鹿って…アントニオここに来たのか?
あんなことって……何があったんだよ?」


「知らんッッ!!!」




「えぇー………」









――その頃アントニオは、上機嫌でケーキ屋へと向かっていた。




.


(ほらルーク、ケーキだぜ〜)


(なっ、こんなので許されるとでも……)


(今なら二個あげるんだけどなぁ〜〜)


(………分かった。)




end











―――――――――――
許しちゃうんです。

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