忍たま
□いい加減くっつけ
1ページ/1ページ
ああ、もうモヤモヤする。見てるこっちが歯痒いよ。
そんな思いを心中に抱くようになったのは、最近のこと…では無かった。
こんな感情を抱くようになって、もう四年が経つ。
自分がこんなに気にしているというのに全く本人達は気が付いていない。
それどころかもう諦めるなんて私に言ってくるものだから困ってしまう。
土井先生もきりちゃんも、本当に馬鹿だよ。
一年は組の皆だって先輩方だって学園中が、あの二人の想いを知っている。――あの二人以外は、みんな。
はぁ、とため息を吐いて教室の窓から外を覗くと調度中庭に担任教師が見えた。
隣に居るきりちゃんはそんな担任教師を見つめてさっき私がしたよりもずっと深くため息を吐いた。
頬を赤く染めて教師をいとおしそうに見つめる姿はまさしく恋する乙女。
こんな姿を見て気が付かない筈なんてないよ、きりちゃん。
「なぁ、…乱太郎」
「何?きりちゃん」
今にもりんごになっちゃうんじゃないかって程真っ赤になったきりちゃんの横顔を、私はちらっと横目で捉えた。
「……俺、もう……」
何時も通り、何時も通りのきりちゃんの言葉の続きを私は頭の中で浮かべ上げた。
何を言うのか、知ってるよきりちゃん。
だっていつも言ってるじゃない。
“諦める”
馬鹿だよ、本当に。
だけれどそのきりちゃんの言葉の続きを、私が聞くことは無かった。
「…………あ」
きりちゃんから聞こえて来たのはただ驚いたようなその一声。
私は何かを察したように土井先生に視線を移した。
土井先生がきりちゃんに気付いたようでこっちを見つめて居る。…正確にはきりちゃんを見つめてきりちゃんに微笑んでいる。
きりちゃんはそんな土井先生を見て余計に頬を赤くした。
馬鹿だなぁ、本当に。
頭の中で何度も何度も連呼した。
ねぇ、きりちゃん。
分かるでしょ?
あの顔を見て、気が付かない筈なんてないよ。
土井先生のきりちゃんを見つめるその顔は、今隣に居る親友が土井先生を見つめる顔と一緒。
いとおしむように、唯見つめあっている。
どうしてお互い気が付かないのか、分からないくらいに。
土井先生も、きりちゃんも、――どうして気が付かないの?
そんな二人を見て、私はため息を吐くしか無かった。
「……いっそのこと、私がここから叫びたいよ」
そう小声でぽつりと呟いた私の声は二人の世界へと落ちた担任教師と親友の耳に届くこと無く他に誰も居ない教室へ吸い込まれていった。
end
title確かに恋だった
.