忍たま
□今でもずっと、変わらない
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もうもうと湯気の上がる揚げたてのフライドポテト。
一本、また一本と口へ運んでいく。
「土井先生、料理上手くなったっすよね」
「そうかぁ?練習したからな」
にっこり微笑んだ土井先生の顔は、昔と何一つとして変わることのない優しい優しい笑顔。
――そう。俺には昔の記憶があった。そして土井先生にも。
一年は組の皆や忍術学園、すべて頭に残っている。
勿論今まで習った忍術なんかもすべて。
俺がこの時代で土井先生と出逢ったのは、今通っている中学校だった。
土井先生は中学の教師をしていて、俺はその生徒。土井先生は担任。
現在も前と変わらず教師を続けている土井先生に、やっぱり向いてんだなと思った。――生徒思いだしな。
俺はまた親を小さい頃に亡くした。
そんな俺をまた土井先生が家に住まわせてくれてるってわけ。
つーかどんだけだよ…前世でも今でも。親を早く亡くすなんて神様は俺をどうしたいんだよ。
とか神様を恨んでいたんだけど土井先生に逢えてからは土井先生にまた逢う為に俺の人生は何時もこうなのかと勝手に思い込むようにした。
まぁ今は幸せ…なんだけど。
――えっと、とりあえず前置きはここまでにして。
俺と土井先生は昔色恋の仲だった。
人の目を盗んではキスしたり抱き合ったり…とにかく愛しあってた。
でも実は……今は分からないんだ。
土井先生はあの頃のこと、覚えてるとは言ってたけど何処まで覚えてんのかわからねーし…。大体俺と土井先生がそういう仲だったとかってこと、そこには何にも触れてこない。
―――覚えてないのかもしれない。
それが怖くて。
怖くて堪らない。
だから俺も、なんにも言わない。
「……きり丸?どうした?」
はっとして、気が付くと目の前で土井先生が首を傾げていた。
「なんでもないっすよ」
俺は淡々とそう返してまたフライドポテトを一つつまんで口に放る。
……俺は土井先生が俺の隣に居てくれるだけで幸せなんだ。
隣で笑っていてくれるだけで。
…だからこれ以上は望まない。
「……あ〜〜うっま〜〜〜」
「そうか」
これで、良いんだ。