忍たま

□たまには素直に
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暗がりの中で足音がこだまする。ギシギシと鶯張りの床が鳴り月明かりだけが皆の寝静まり静かな廊下をただひたすら照らす。――そんな真夜中のこと。

今日は体育委員会の七松 小平太委員長が体力をつけるとか言い始め体育委員全員でこんな遅くまで裏山で走り続けたのだ。
全く、折角の美しい顔が台無しになったらどうしてくれるのか。本当に恐ろしい。
けれどどうも自分は七松先輩には弱いらしく。こうして言うことを聞く羽目になるのだが。


はぁ、と溜め息を着いて足元を照らす月の明かりを頼りに自分の寝室へと足を運ぶ。

もうなんとかこの疲れきった身体を早く休めなければ。
そんなことを思いながら足を進めて行くとカタンと、ある部屋から物音が聞こえた。



「…………?」




…まだ誰か起きているのだろうか?全く…。



物音がした部屋へ耳を澄ませると、中から啜り泣くような声が聞こえた。



ズズ、と鼻を啜る音が聞こえ、一体どうしたのだろうかとゆっくりと部屋の戸に手をかける。

そこではた、と思った。

―――月明かりで気付かれるかもしれない、と。


だけど放っておけるほど私も落ちぶれてはいない。

少し、少しだけ戸をスッと開けた。隙間から覗くと月の明かりでうっすらと部屋の中が見える。

そこで漸く気付いた。




――…この部屋は…田村 三木ヱ門の部屋ではないか……?




うっすらと見えたのは布団だった。枕が置いてあるが姿は見えない。



観察している内に、いっそう啜り泣く声が大きくなり私はとうとう痺れを切らした。


ええい、どうにでもなれっ・・!!!






「おい、三木ヱ門…」
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