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□始まりはきっと、
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(……暇だな…)
相変わらず騒がしいギルドの隅で、俺は特にすることもなく座っていた。
「…ねぇ、ガジル」
「!」
そう話しかけてきたのは、俺が酷く傷つけたあいつだった。
「…ケガ、大丈夫?」
「…別に何ともねぇよ」
「…そっか、良かった」
(…何で、)
…あれだけのことをしたんだ、憎まれても仕方ねぇし、俺の顔なんざ見たくもねぇだろうと思っていたのに。
何で、そんなことが言えるんだ。
「…あ、あのさ…」
「…?」
「…ありがとう。庇ってくれて」
「!」
そう言ってそいつは笑った。
真っすぐ俺を見ている瞳は憎悪でも恐怖でもなく。
「…おう」
俺は、思わず目をそらした。
「…じゃあね。それだけ言いたかったの」
パタパタ去っていく水色を一瞥し、すぐそばに落ちていた鉄クズを手に取った。
(…あいつ、レビィ、とか言ったっけか)
そしてそれをかじる。
「…変な奴」
ぼそっと呟いた俺の声は周りの喧騒にかき消された。
始まりはきっと、
end.