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□敗北宣言。
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「…はぁ」

大魔闘演武二日目。
少しずつ明かりが消えていく街を、俺は一人で見ていた。

「……」

――『いい加減ジュビアの気持ちには気づいているんだろ?ハッキリしてやらんか』――

(…ハッキリって言われても、なぁ…)

正直、俺だってわかんねぇ。恋だとか、好きだとか。

だから、ジュビアにも何て言ったらいいのかわかんねぇんだ。

「…グレイ様?」

突然後ろから名前を呼ばれた。

…俺をこう呼ぶ奴は一人しかいない。

「ジュビアか…」

ジュビアは俺の隣まで歩いてきて、同じように街を眺めている。

「…リオンはどうした?」

「先ほどお帰りになりましたよ」

「そうか」

「…やっと二人きりになれました」

そう言ってふわっと笑う彼女を見て、また俺は何も言えなくなる。

「…嫌ですか?」

「え?」

「ジュビアと、二人きりは嫌ですか」

「……!」

…何で、そんなこと聞くんだ。

ジュビアは俺を真っすぐ見つめている。

「…なんて。冗談です」

「……、」

「もう遅いですし、宿に戻りましょう」

「…ジュビア」

去っていこうとするジュビアの背中に、思わず声をかけた。

「…嫌じゃ、ねぇよ」

「!」

ジュビアが振り向く。

「お前のことは仲間として、好きだ。俺は恋とかよくわかんねぇし」

「……」

ジュビアの大きな瞳の中に俺が映る。

「…だから、その、俺のことはー…」

「ええ、わかってます」

「!」

「グレイ様はジュビアを好きではないことくらい、わかってます」

「……それなら、何で」

「ジュビアはグレイ様とお付き合いするためにアナタを好きなわけではないですから」

戸惑う俺とは逆に、余裕の表情のジュビア。

「…諦めませんよ」

「!」

「ジュビアがグレイ様を好きじゃなくなるか、グレイ様がジュビアを好きになるか、勝負です」

そう言った彼女の笑顔は驚くほど綺麗で。

(……あぁ、)




きっと俺は、




負ける。




「…では、ジュビアは宿に戻ります」

そう言ってくるっと後ろを向き走っていく彼女の後ろ姿をしばらく見つめていた。










敗北宣言。



end.


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