お正月企画小説
□*Do not too good child
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(side 志保)
今日は特別な日だといって、朝から大騒ぎで自分を飾り立てていく大人達を眺めながら、
気づかれないようにそっと息を逃した。
無理矢理着せられたワンピースは、お父さんとお母さんが死んじゃったと言われた時に着せられたのと同じ、真っ黒な嫌な色。
テンサイとか、スバラシイチノウとか、ミライノカンブだとか、意味のない言葉を体の周りに撒き散らしてくる大人達も真っ黒な人ばかりだ。
お姉ちゃんが聞いたらきっと怒るだろうから言わないけど、わたしは本当は黒が嫌い。
「幹部の方が迎えに来られているだろうから、絶対に失礼のないようにするんだ」
シツレイノナイヨウニ
レイギタダシク
キニイラレル
クチゴタエシナイ
絶対に、『イイコ』にする。
5日前から何回も何回も繰り返し言いつけられる言葉に頷いて、扉を開ける。
黒のソファーに同化したかのような闇色のコート。
闇の中で照明を反射するほどに透き通った銀の髪が、強烈な印象を与える。
しかしそれすら掻き消すように、目の前にいたその人は、真っ黒な人だった。
今まで周りにいた大人達も、私のワンピースも、この黒に比べれば、曖昧な灰色だ。
まるで。
そう、まるで、闇から出てきたみたいに。
相手はソファーに座った状態なのに、見下ろされて視線が合う。
大っきな人……。
一拍の間を置いて、ぐっと顰められた顔に、ハッとした。
そうだ……あいさつ、しなきゃ。
「………こん、にちわ…」
「……。」
擦れそうな声をなんとか絞り出したけれど、目の前の顔は顰められたままだった。
こんな子どものお守りを命じられたのだ。不満なのかも、いや、きっと不満なのだろう。
サイネンショウのカンブで、まだ経験は浅いけれど、とても優秀ーーそんな話をよく聞いた。
やっぱり、キニイラレルのは無理みたい…
とソファーとコートの輪郭に目を凝らしてただぼぅっと見つめる。
やがて
「……行くぞ」
という低い声が頭上から降ってきた。