in the silver.
□ホームズ君の縮め方
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ミステリートレインでの哀ちゃん抹殺阻止という、大仕事を成し遂げたところで、時計の針を巻き戻そうと思う。
どこから話すべきかな……ああ、そうだ。
やはり、物語の始めからだろう。
全ての始まり
ーー舞台は遊園地、非日常を懸命に作り出されたあの場所でのあの事件から、話そうか。
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街灯が夜の闇を煌々と照らす。
私はその漏れ出る光によって、僅かに薄まった闇の中にいた。
周辺よりやや高さがあるアパートの屋上だからか、吹き付ける風が強く冷たい。
コートの裾をバタバタと揺らしていくのが目の端に入る。
今着ているのはいつもの黒ではなく、濃灰色のコート。
実は漆黒と言うのは、暗闇の中では非常に目立つ色である。
漆黒が紛れるのは、一筋も光が差さない完全なる闇の場合のみ。
濃過ぎて浮いてしまうのだ。
そしてそんな闇は、ほとんど存在しないと言っていい。
大抵は、目が慣れれば見える程度の闇ばかりだろう。
対して灰色というのは、薄闇では物の輪郭をぼかして曖昧にするという優秀さを持つ。
真に闇に紛れることが出来るのは、灰色なのだ。
……つまり、何が言いたいかというと、
濃灰のコートを着た今日の私はかなり本気、と言うことだ。
レンズの中、照準(ピント)は15メートル程下、工藤邸の門前。
対象を完璧にレンズに捉えた私は、静かに笑みを浮かべた。
そして、そっとシャッターを押す。