in the silver.

□ミステリートレイン前編
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「ああ…ここに居ましたか、二人とも」


テノールの特徴的な声が、態と暗めの照明に絞ってあるバー内に木霊した。

その声にベルモットがあからさまに眉を寄せる。


「バーボン。何の用かしら?今、ジンを落とすのにあと少しって所だったんだから…」


「そうですか?僕にはフられる一歩手前に見えましたが」


優雅に口元を緩めて笑うバーボンに、ベルモットはやれやれと首を振り大袈裟に溜息をついて見せた。


「分かってないわね…。そんな風だから、貴方はあの子に振り回されるのよ」


「おや、それは、痛い所を突かれましたね…。最近はまだ大人しい方なんですけど」


さらに苦笑するバーボン。

組織内でこの二人は割と仲がいいのだ。

話題は置いておけば、いいコトだ。うんうん、組織といっても幹部は小数精鋭なんだから、仲良くしないとね!

仲良きコトは美しきかな、だ。

……話題は置いておけば!



「ジン、朗報です。久しぶりのシェリーの手掛かりですよ」


バーボンは原作の態度とあんまり変わらないなあ。ただちょっと世話焼きな気がするけど。


以前に仕事から着替えずに帰ってきて、めちゃくちゃ怒られた事がある。

元組織の一員だった男が、組織のコンピュータをハッキングして、情報を流そうとしたのだ。あの方は裏切りを絶対に許さない。
命を受けた私はウォッカを連れて、その男を処分した。

その時に予想以上に暴れられて、私のコートに大量の返り血が付いたのだ。

コートの色は黒だから、全然目立たないし、付いた位置も下半身辺りで車に乗れば見えないので全く問題無し。


そう考えた私は、着替えずにさっさと戻ってきた。近かったし。


で、


「何考えてるんですか⁉︎血液って綺麗じゃないんですよ⁉︎肌に付着して、血液感染とかしたらどうする気ですか!何が入ってるか分かったもんじゃないんですからね!そもそも、血液には催吐効果があるんですよ⁈」


と凄い勢いで捲し立てながら、バーボンは一切躊躇せずに私のコートを剥ぎ取った。

もう、唖然とするしかなかったね!

めっちゃ怒ってたし?

私、今までバーボンに嫌われてると思ってたしね。まさかこんなに心配される日がくるなんて。


ベルモット曰く、どうやら其れは最近出来た彼女の影響らしい。
なにやら色々危なっかしい子らしく、絆されたバーボンはすっかり世話焼きへとクラスチェンジしたらしい。


私に対してもつい癖で、発動させてしまった、との事だ。


ええー…。なにそれ自慢?

何で組織にいるのに、そんな純愛めいた恋できるの?
羨ましい。


いや、私は次の誰かになるか、元の身体である名無しさんの身体に戻らないと一生出来ないけどね!


別に、全然平気だし!お兄ちゃん(精神はお姉ちゃん)は妹がいれば、それで十分だし!


……本当だよ?


まあ、高校のバレンタインで机やロッカーがチョコで埋まったときにもう諦めてたしね…。

女の子の扱いが上手いとか、当たり前だよ。女の子ですから!
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