お正月企画小説

□*Do not too good child
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○第三位:シェリー

インジンさんとシェリーちゃんの出会い編。

※当時、インジンさん 18歳、
志保ちゃん 6歳 です。
インジンさんが(当然ですが)若い(笑)
幹部内にまだライやウォッカはいません。


*Do not too good child


私は廊下の壁に観葉植物を挟んで設置された、黒いソファーに足を組んで座っていた。
ソファーと同色のコートが同化している中で、腰まである銀の髪だけが漆黒の海底を漂っているかのように目立つ。

無言無表情で座る私が、実は今、この上もなく緊張していると、一体誰が気づくだろうか。


ああ……どうしよう。
ついに……ついに、この時が来たのだ!




*・゜゚・*:.。..。.:*・・*:.。. .。.:*・゜゚・*

昨日渡された資料の内容を頭の中で思い返しながら、私は溜息をついた。


宮野志保 6歳

組織の科学者である宮野夫妻の次女。
通常であれば小学校に通う年齢だが、彼女の高い知能指数を受けて組織での英才教育が決定した。
十分に知識を詰め込ませた後は、その頭脳が使い物になるレベルだと判断されれば、得意分野を特化させるためにも恐らく留学という流れになるだろう。


……さて、お気づきになっただろうか?


彼女ーー宮野志保は、後に
『シェリー』というコードネームを与えられ、この世界のファンタジーを一手に引き受けるミラクルな薬、
APTX4869を生み出すスーパークールな小学生
灰原哀ちゃんであることに。


大丈夫だよね…いや、怖がられたりしたらどうしよう。


今の私の容姿は、銀の長髪に、彫りの深い顔、鋭すぎる目つき。

お世辞にも優しげとは言えない!

さらに、すくすくと伸びた無駄な長身である。

怖いよ!


高校卒業現在、未だ伸び続けている。
原作からすればギリギリ成長期ということもあり、まだマシなんだけどね……。


好きでこんな怖い容姿なわけじゃない。
私だって子供受けする優しいお兄さんを目指したかったよ!

しかしDNAは無情である。


ついつい、灰原哀ちゃん状態での反応を想定してしまいそうになるが、相手は「まだ」小学生のふりした大人ではなく、リアル小学生だ。
女子大生時代に見ていた、紙面上の彼女のような大人な対応は望めないだろう。


出来れば……出来れば、泣かないで欲しいなぁ…!!


いずれは彼女にとって恐怖の対象となるのは承知の上だが、組織にいる間ぐらいは、友好的でもいいじゃない。
第一印象ぐらいは、良くてもいいじゃない。


まだ幹部になったばかりで、最も年下の私が哀ちゃんのお迎えに行かされるのは、当然といえば当然なのだが。

もっとこう……優しげな人は選べなかったのか。

例え普段、嗤いながら標的を撃ち抜くような性格であっても、一時的に愛想笑いが出来れば十分なのだから。


微笑もうと思えば思うほど、引きつっていく顔面筋に諦めをつけて、足を組み替えた時、
目の前の扉がそうっと開いた。


ゆっくりと現れた深い青の大きな瞳をやや伏し目がちにして、
一歩踏み出した動きに合わせて赤を帯びた茶髪がさらりと流れる。
黒いワンピースから伸びる手足も首も、記憶の中よりもずっと小さく細く白い。


……………かっ……


………可愛い!!


ヤバイ、可愛い!めっちゃ可愛い!
えぇっ?凄いな!半端ないわ!
いい加減慣れたと思ってたけど、二次元なめてた!


東の名探偵の母親、藤峰有希子さんをテレビで観たときに匹敵する衝撃である。
有希子さんもめちゃくちゃ美人だった。
ドラマは勿論全部観てましたとも。
本当に素敵!


一瞬にして女子大生に戻りそうな思考を、眉間に力を入れ奥歯を噛み締めて、必死に耐えていた私は、
今からでも小さな名探偵側に付けないかと半ば本気で考えた。


「………こん、にちわ…」

「………。」


歳の割には大人びた涼しげな声音で困惑したように話しかけられるが、もう少し待って欲しいかな!
主に私の精神安定を取り戻す為に!


取り敢えず今言えるのは……

シェリーは、幼少期から紛れも無い美少女であった、

ということだ。
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