*。・SHORT STORY・。*
□EIEVUI
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何時だったか体調を崩した時、
彼はこんな風に私を優しく看病してくれた。
危ない目に遭いそうになった時、
彼は身を挺して私を守ってくれた。
心と身体に大きな傷があった時、
彼は私を癒してくれた。
「…ブ、ィッ……」
「ほら!さっさと立てよッ!!」
毎日毎日、辛いトレーニングの連続。
休養すら真面に採らせてくれない。
時たま挑んで来るトレーナーとのバトルに負ければ仕置きを受けて、
勝っても褒めてくれた試しがない。
―――こんな日々が何時まで続くのだろうか…
―――…もうイヤ…逃げたい……
そしてある夜、
私は寝床を抜け出して…逃げた。
始めはゆっくり静かに、
姿が見えなくなった所で全力疾走。
自分の特性“逃げ足”を
初めて発揮出来た気がした。
途中何度か小石や木の根に躓いて転けたり、
木や岩に激突したりしたけど、
構わず走り続けた。
森を抜けて、
月明かりに照らされている湖に辿り着いて
足を止める。
見上げれば輝く月。
その暖かい光の中で、
私は眠りについた…。
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