Silver Sword
□第2章
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そのなぞの巨大な人物の正体は茅場晶彦であると知り、プレイヤーのほとんどが息をのんだ。
「茅場晶彦……って、このゲームとナーヴギア作った奴だったよな?」
確認するように小声でギンが問う。
シンも静かに頷いた。
『プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅しているのに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、≪ソードアートオンライン≫本来の仕様である』
驚くプレイヤーたちを嘲笑うかのごとき言葉は更に続いた。
『諸君は今後この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログインすることはできない』
「城…?」
茅場の言葉に、シンが首を傾げた。
「城って、アインクラッドだろ?百層をクリアしろって事かァ?」
「…オイオイ。ベータじゃろくに上がれなかったんだろ?できんのかよ」
ギンが呟いた。
ベータテスト―――正式サービス開始前の稼働試験に参加できたのは十万人と言う応募者の中から選ばれた千人。彼らは2カ月の間、このアインクラッドで戦い、クリアできたのはたったの六層だったと言う。
そんな2人の心境を無視して茅場は更に言葉を続けた。
『また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合――――――』
わずかな間。
一万人が息を詰めた、途方もなく重苦しい静寂の中、その言葉はゆっくりと発せられた。
『――ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』
脳を破壊する―――つまり、殺す、と。
集団のあちこちでざわめきが起こる。
「ナーヴギアは確か大容量のバッテリを内蔵してた筈だよな」
シンの問いにあぁ、と頷くギン。
「ギアの重さの三割はバッテリセルだって聞いたぜ」
ギンが言う。
2人とも前世の記憶があるからか、周りと違って落ち着きがあり、焦ってはいないようだ。
プレイヤーたちのざわめきが聞こえたかのように茅場のアナウンスが再開された。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み――以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、既に外部世界では当局及びマスコミを通じて告知されている』
『ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果…』
いんいんと響く金属音の声は、そこで一呼吸入れ。
『――――残念ながら、既に二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
どこかで、ひとつだけ細い悲鳴が上がった。
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