Silver Sword
□第1章
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そして、8年が経った。
「兄貴!早く剣道場行こうよ!!」
「はいはい。銀時、そんなに急がなくても…」
8歳になった銀時と13歳になった松陽は、共に近所の剣道場に通っていた。
松陽も銀時も、前世の記憶があるだけにそれなりに…というか、かなり強かった。
「こんにちはー!」
剣道場につくと、そこには銀時と同じくらいの年齢の2人の子供がいた。1人は男子、もう1人は女子だった。どことなく雰囲気が似ている事から、兄妹なのかと銀時は思った。
「お前等、誰だ?」
銀時が声をかければ、2人はビクッと体を硬直させた。
「こら、銀時。突然そんな事言ったら失礼ですよ?」
「はーい。…えと、俺は吉田銀時ってんだ」
「私は銀時の兄の、吉田松陽です。…貴方達は?」
銀時はニッと、松陽はふわりと笑った。すると、2人の子供は緊張を解いたようだった。
「……俺は…桐ケ谷、和人」
「あたしは桐ケ谷直葉です」
2人―――和人と直葉はそれぞれ名乗った。
「和人と、直葉な!よろしく!」
「よ、よろしく…」
和人はうっすらと笑みを浮かべた。
「銀時!松陽s…兄!」
そこへ、1人の少年が駆けて来た。
少し紫がかった短髪に、鋭い目つき。
「晋助ー。いい加減慣れろよ」
銀時が呆れたように少年―――高杉晋助を呼ぶ。
晋助もまた、前世の記憶を持って生まれ変わっていた。死んだ時期は全く違うのに、銀時と同じく8歳である。
銀時よりも後に剣道場に通って来て、初めて会ったときの晋助の驚き様は凄かった。
そして銀時に松陽が本当に松陽であることを何度も確認し、昔と同様に懐いて今に至る。
「ウッセェな!慣れねェんだからしょうがねェだろ!!」
「ってか、先生とか呼ぶなよ」
「だからまだ呼び方に慣れてねぇだけだっつーの!」
因みにこんな事を言っている銀時も、最初の内はずっと『先生』と呼んでいて、最近漸く『兄貴』に慣れてきた所である。
口論を始めた2人を、和人と直葉は驚いたように見る。
「銀時に晋助。和人君と直葉ちゃんが驚いているでしょう?」
松陽の言葉で、2人は口論を止めた。
「……っていうか、こいつら誰?」
「今日から此処に通うんだって」
「ふーん」
銀時が言って、晋助は2人をじっと見た。
「俺は高杉晋助だ。…よろしくな」
「桐ケ谷和人。よろしく」
「妹の直葉です。よろしくお願いします」
それぞれ名乗ると、5人は道場に入った。
周りから視線が集まる。
晋助が一睨みすると、サッと皆の視線が消えた。
「…晋助」
松陽に言われると、晋助はフン、というように顔をそらした。
「…だって……」
「だってじゃないでしょう?」
「ぅ゛……」
晋助が苦い表情をする。
「やーい、怒られてやんのー」
「銀時も、そういう事を言うんじゃありませんよ」
「ぅ゛……」
銀時も苦い表情をする。
苦い表情で黙ってしまった2人を見て、和人と直葉がプッと吹き出した。
「なんだよー」
「え、あぁ…ごめん。つい……」
和人が慌てたように笑いを引っ込めるが、それでも俯き加減で和人を恨めしそうに見る銀時を見て、再び笑いそうになる。
「かぁーずぅーとぉー!」
「え!?ちょ、銀時!?」
銀時が恨めしそうな顔で和人に迫ると、和人は慌てたように後ずさった。
「じゃ、直葉もだな」
「えぇ!?あ、あたしも!?」
晋助は直葉の方を向く。直葉も後ずさる。
「まったく、貴方達は……」
松陽はため息をつくと、銀時と晋助の頭に拳骨を落とした。
「「〜〜〜っ!!!!!!」」
涙目で頭を押さえて蹲る2人。
「和人君と直葉ちゃんに何しているんですか?」
「「ごめ゛ん゛な゛ざい゛ぃぃぃぃ〜……」」
2人に、松陽はニッコリと黒い笑みを浮かべた。
和人と直葉は唖然としてから、再び吹き出した。
「笑い事じゃねェんだぞ!」
「そうだぞ!兄貴はなぁ、ああ見えるけど、怒るとものっすごく怖―――「何か言いました?」…いや、言ってないから!兄貴、怖いから!その笑顔やめてェェェェェェェ!!」
銀時が松陽に真っ黒な笑みを向けられて、顔を真っ青にして叫ぶ。
「はあぁぁぁぁぁぁ……」
松陽がふかーいため息をつくと、銀時と晋助の身体がビクッと跳ねる。
「……まぁ、まだ何もしなかったのでこの位にしましょうか」
その言葉を聞いて、2人はパッと立ち上がった。
「よし!じゃ、行こうぜ!和人、直葉!」
「兄貴も行こ!」
そして晋助が和人と直葉、銀時が松陽の手をそれぞれ引いて、彼らは練習の輪に入っていったのだった。