君との物語

□えぴそーどU
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 あの後綱吉は、スタスタと家に向かって歩いていた。


「おいツナ!!」

 ハッとすると、後頭部をペシッと叩かれた。

「なんで帰っちまうんだよ」

「……オレに守護者なんていらない。オレはもう十代目じゃない……」

「ツナ……」

「ごめん、リボーン。お前がオレの為にいろいろしてくれようとするのは感謝してる。……けど、もうオレは無理なんだよ。人といるなんて、信じる事なんてもう……」




「何が信じられねェって?」




 後ろから突如声が聞こえ、驚いて振り向くと、そこにいたのは先程の銀髪教師だった。

「あ、さっきの先生……」

「よォ沢田」

 銀八は軽く手を挙げた。

「あの、学校は?」


「あー、サボってきたわ」

「へ!?」

「つーかおめーに名前言ってなかったと思ってよ」

 それだけの理由で!?とつっこみたくなったのは秘密である。

「『今の』俺の名は坂田 銀八。よろしくな」

「……?あの、今のって?さっきリボーンも言ってましたけど」

「俺の本名じゃねぇし」

 サラリと不思議な事を言う銀八に首を傾げた。

「俺の本名は『坂田 銀時』。そんな変わんねェけどな。まぁ面倒だから銀さんとでも適当に呼べ」

「は、はぁ……」

 綱吉はただ頷く事しか出来なかった。

「ま、それだけだ。後は何か困ったらこれにでも、電話しろ」

 何やら紙を渡され、見るとそこには携帯番号、メアドが書かれていた。

「それ、登録したら即跡形もなく燃やせよー」

 なぜかと問うと「個人情報だから」と言われた。

 そんなに嫌なら教えなくともいいのに……と思った。

「あと、俺で良ければ力になるから、何かあったら連絡しろ。授業中とかは無理だが、基本暇だからよ」

「え、でもさっき守護者にはならないって……」

「俺はアイツ等が守護者になる事はダメだと言ったが、俺はならねェとは一言も言ってないぞ」

 驚く綱吉とは反対に、リボーンはニッと笑った。

「さすがはギントキだな」

「リボーン、お前ぜってーわざとだろ」

 銀八が呆れたように言った。

「頼むから『今の姿』の時は『銀八』にしてくれよ……」

「しょうがねぇじゃねェか。癖なんだよ」

「何でもいいから直せ」

 それだけツッコむと、綱吉にもう一回向き直った。

「それにお前に訊きたいことがあってな」

「オレに訊きたい事……?」

 銀八はあぁと頷く。




「お前は、元の守護者たちのこと、好きか?」




 綱吉はビクッとしたが、頷いた。


「そいつらの事、信じてるのか?」

 綱吉は俯き、少し震えながら手をギュッと握った。

「……オレ、は、信じたい。……けど、怖い、から、信じられてない。もう、わからない……。オレが信じても、何も変わらない……」


「信じても、良いんじゃねェのか?」


「え?」

 綱吉が驚いて顔を上げると、銀八が真剣に綱吉を見ていた。



「裏切られても良いじゃねェか。他の奴がどうだろうと良いじゃねェか。問題は、お前が誰も信じねェで、そのまま死んじまう事だ。お前は誰かを信じてやって、生きれば良いんじゃねェのか?」


 銀八は「違うか?」と言った。


 違わなかった。

確かに信じてはもらえなかった。

裏切られたと思っていた。

でも、自分が信じるかどうかは別。

「……いい、え。オレは……皆を信じたい、です」

 綱吉の瞳には決心の色が。

真っ直ぐで綺麗な色をしていた。


 それを見た銀八はフッと笑った。


「それが聞ければ十分だ。じゃあそんなお前に俺は約束してやらァ」







 ―――――必ず、お前が笑えるように、お前の居場所を取り戻して見せる。



 その言葉に、綱吉の目から涙があふれた。

「ちょっ。泣くなよ!?何か俺が泣かしたみたいじゃん!?」

「お前が泣かせたんだけどな」

「え、何まさかそんなに嫌だった!?ご、ゴメンね……?」

 銀八が焦って謝ると、綱吉が泣きながら首を振った。

「ち、違うんです……!嬉し、かったんです!家、でも、学校、でも、オレ、の居場所、何て、っ無かったから……」

 泣き続ける綱吉に、銀八は頭をぽんぽんっと優しくたたいた。

「そっか……。何がお前を苦しめているのか分からねぇ。けど、辛かったんだよな?今までずっと、抱えてたんだろ?」

 泣きじゃくる綱吉に優しく笑いかけた。

「じゃあ今は泣いていい。苦しかった分泣け。だから、泣き終ったら笑え。んでもって、その後ウチに来い。お前の新しい居場所を作ってやるよ」


 綱吉は泣きながら「ありがとうございます」と言って笑った。




えぴそーどU
 それぞれの決心
 完


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