銀色×僕SS

□第九話
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「というか準備おわった?」

 連勝が言う準備とは、引っ越ししたばかりの部屋に、全て物を運んだのか、という事である。

「ん?まだ終わってないよ?」

「終わってないって……。ほら、早く片付けて来いよ」

「(ボソッ)出来ないから困ってんじゃねーか」

「何か言った?」

「何にも」

 銀は小さく誰にも分からないようにため息をついた。

だが、それが分かったのがただ一人だけいた。

「銀たん、妙なこと考えてるね〜」

 百目の先祖がえりである残夏だった。銀は内心ギクリとなる。

「妙な事?何の事?」

 銀がしらばっくれると、残夏は「うふふ〜」と笑った。

「何処かを再現しようとしてるんでしょ〜?ボクにはそこが何処だかわからないけどね〜」

「……はぁ。残夏の能力忘れてた……」

「え〜、それつまりボクのこと忘れてたって事〜?ひどいよ〜、しくしく」

「あー、そうだね。もうそれでいいや」

「銀たんつめた〜い」

 銀は「嘘だよ」と言って笑った。

その笑顔に皆の顔がほころんだ。

 銀には何らかの力が秘められている、といつも言われていた。

 周りにいつも人がいて、何故か引き付けられる力を持っている。

そう言われていた。

前世でも、現世でも変わらない。

銀らしいことだった。

「……だから、しばらくは何もしない」

「じゃああの荷物どうするのよ。廊下とかにだしっぱにしないでよね。邪魔だから」

 西郷似のオカマメイドがそう言った。

「あ、それは大丈夫。ちゃんと中に入れておくから安心してかい―――メイドさん」

 怪物と言いそうになって辞めたのは、前世の西郷との件がある所為だ。

「それなら良いけど。それからあゆむよ、童辺 あゆむ」





「え〜、怪物でしょ〜?このオカマ〜」

「へ?」

 何処からか声が聞こえてきた。辺りを見渡すが知らない人はいない。

「(まさか……いや、ないない。ゆ、幽霊とかいるわけ……)」

「あんたねぇ……。というか何処にいるのよ。見えてないから」

「あはっ♪そうだった〜」

 ポンッと音がして後ろから抱きつかれた。

「うわぁ!?」

 前世の記憶の為と、幽霊だと思って驚いたのと両方で、心臓がバクバクとなる。

「だ、誰っ!?」

「私〜?私はメイドの小人村 ちの!よろしくね〜」

 聞くと ちの はコロボックルの先祖がえりで、小さくなっていたらしい。

どうりで気付かないはずだ。

「よ、よろしく(ここの住人キャラクター濃すぎだろ!?)」

 銀は少し顔が引きつりながらも笑みを返した。

 するとあゆむが ちの を引っぺがした。

「いきなり困らせてどうすんのよ。常識ってもんを知らないの?」

「その顔の方が常識知らずだよ〜」

「あんたねぇ……!」

 銀はただただ苦笑いしていた。

 大変そうだ、と思う半面、妖館は賑やかで楽しそうだな、と喜んでいた。
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