銀色×僕SS

□第二話
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 銀が7歳になった事、あるお屋敷に来ていた。

 後から知ったのだが、銀は狼男の先祖がえりなのだと言う。

 周りは銀を敬い、縁起物のように扱ったが、親二人(特に松陽)は我が子を大切に、1人の子として育てた。

 銀はそれが嬉しかった。

 銀たちが来たのは白鬼院家というお金持ちの有名な所だった。

 白鬼院家と同じ位銀の家も家柄がある。

 そして白鬼院家とは交流があったため、その挨拶だと言う。

 中に入ると、銀よりも小さい女の子が親とみられる人の横にチョコンと座っていた。

「よくぞ参られました。天狼聖殿」

「お久しぶりです。白鬼院様」

 銀は『坂田』ではなく天狼聖(テンロウセイ)という名字になっていた。

「その子は確か先祖がえりの?」

 松陽はニコリと笑い、銀の頭を撫でた。

「はい、そうです。……銀、ご挨拶を」

「……お初にお目にかかります。さ――天狼聖 銀です」

 銀は頭を下げた。

「良くできましたね」

 すると銀は嬉しそうにはにかんだ。

「その子が先祖がえりの……?」

 銀の母親である玲菜が訊くと、白鬼院の長は首を横に振った。

「この子はその妹です。先祖がえりは姉の凜々蝶と申します」

「あの、その子は?」

「向こうの部屋にいます」

 銀は首を傾げた。

「なんで此処に来ないの?」

「こら銀!」

 玲菜に止められたため、銀は少し黙ったが、また口を開く。

「……その凜々蝶?と遊んでも良い?」

 すると長は驚いたように見た。

「……まあ良いでしょう」

 侍女を呼んで、銀を案内させた。

 暫くすると一つの部屋の前につく。

「凜々蝶様。お客様です」

「……わかった。入れ」

 中から幼い声が聞こえた。

 そして侍女が襖を開けると、中には綺麗な着物で着飾り、真っ直ぐに伸びた黒髪に紫の瞳をした、銀より少し幼い少女が座っていた。

 その少女は先祖がえりである白鬼院 凜々蝶だった。

 あまりの美しい外見に銀は少しだけ見惚れる。

 がすぐにはっとして戻った。

「……誰?」

「お――私は天狼聖 銀。初めまして。えっと……凜々蝶だよ……ね?」

 凜々蝶はコクリと頷いた。

「天狼聖 銀って確か狼男の先祖がえりの?」

「あーうん。凜々蝶は何の先祖がえり?」

「鬼」

「……へ?」

「だから鬼の先祖がえり」

 銀はそういう事か、と内心ホッとする。

 自分に言われたと思い、一瞬驚いていた。

「なんでさっき驚いた?」

 銀は何といいわけしようかと迷ったが、凜々蝶が真っ直ぐ見て来たので観念して答える事にした。

「……私の事を鬼って言ったかと思った」

 凜々蝶はぽかん、としていたがやがてクスクスと笑い出した。

「な、なん……なに?」

「君が鬼のワケないだろう?おかしなことを言うな、君は」

 そんな言葉に銀は少しだけ救われて、フッと笑った。

「ありがと」

 そう言うと凜々蝶がまたクスクスと笑う。

「何故礼を言うんんだ?」

「えっと……なんとなく?」

「ホントにおかしいな、君は」

 未だに笑われている銀はなんだか恥ずかしくなって話題を変えた。

「それよりその君ってのやめよーよ」

「じゃあ何て呼べば良いんだ?」

「銀さんとか銀t――じゃなかった銀でいい」

「……じゃあ銀」

「うん」

 銀はニコッと笑った。

「じゃあその無理やりは止めろ」

「??」


「その口調の事だ」

 銀は少し困ってしまった。

 銀としてはありがたい事なのだが、銀は今女であるため、男っぽい口調は母親に止められていた。

 だから努力しているのだが、ここで気を抜いては素が出てしまう。

「えーっと、それはなんていうか……」

「僕の前くらい楽にして良いんだぞ?」

「……んじゃお言葉に甘えてそうするわ。でも結構男っぽいって怒られんだけど?」

凜々蝶は「確かに」と言って苦笑した。

「まあ僕もこんなだからな」

「でもお前は可愛いもんだろ?外見も美人だしィ?」

「お世辞は結構だ。もう聞き飽きた」

「いや、お世辞じゃねェって……。ま、いっか。それより何でお前は親と一緒にいねェんだ?」

 すると凜々蝶の面影が暗くなった。

「(なんか地雷踏んだ……?)」

「父様と母様は、妹の方が大事なんだ。僕が先祖がえりだからって言うのもあると思うけど」

 銀は首を傾げた。

「先祖がえりだと駄目なのか?」

「というか先祖がえりは親と放されるのがほとんどだ。……君は違うのか?」

「俺は親馬鹿だからなァ……。俺が離れたくても離れねェよ、特にせn――父さんが」

 凜々蝶は眼を見開く。

「君は先祖がえり……なのに?」

「うーん……。先祖がえりだから親と離れるってのはどうも違う気がすんだよなァ」

「……それは君が親に愛されたからだ」

 銀はそれは今の話だ、と言おうとして止めた。

 きっと前世の事など言っても、転生したと言っても、信じてもらえないと思ったからだ。

「まぁでも寂しかったら俺んとこ来ればいいんじゃね?きっとお前なら大歓迎だぜ?」

 銀はニコリと笑った。自分では気づいていないものの、かなり可愛かったりする。

 凜々蝶はパァァっと顔を輝かせた。

「良いのか!?」

 銀はもちろん、

 とでもいうように頷く。

「いつでも来いよ」

「うん!」

 二人は松陽が呼びに来るまで話していた。

 そこからたびたび凜々蝶が銀の家に来て、松陽に大いにもてなされたという。



第二話 (完)





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