気づいた時には……

□七話 三つの明かり
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「金時ーめっそフリは止めるぜよ」

「金じゃなくて銀な、銀」

 銀時はツッコむ。

「それにフリって何のことだ?」

「鬼だって言っちょる事ぜよ」

「!?」

 銀時は少し驚いた後、また目つきを鋭くさせた。

「フリじゃねェさ。俺は鬼。お前等なら知ってんだろ?此処にいる奴等はもう情報掴んでるか?『屍を喰らう鬼』ってな」

 晋助がククッと笑う。

「そのわりには人殺してねぇじゃねェか」

 銀時は黙る。

「向かってくる奴は全員殺す。近づいた奴、さっきを向けた奴は老若男女斬り殺す。昔テメェ言ってたよなァ。殺されるから、生きるために殺すんだってな」

「それで最初はわしらぁも最初殺されかけたしのう。アハハハ〜」

 銀時ははっとする。

「別にせめてるわけがやない。……ただ、今のおまんは苦しそうちや」

「苦し……そう?俺が?」

 辰馬は頷く。

「だからさっき何もしなかったんじゃろう?」

 さっき、とは新八と神楽が向かってきたときの事。

 殺そうともせずに、ただじっとしていた。

 まるで死を望んでいるかのように。

「……あれは余裕を見せていただけだ。テメェ等も斬ろうと思えば斬れる」

「……だったら斬ればいい」

「!?」

 小太郎も銀時の方へ来た。

 小太郎の言葉に晋助と辰馬はニッと笑う。

「そうだぜ、銀時。邪魔なら俺達を斬ればいい」

「まあ抵抗はするがのう。アハ、アハハハハ」

 銀時は驚いた様子だったが、腰を落として斬りかかって来た。

 その目は昔のように、ただ殺す事しか考えてないような目……ではなかった。

 銀時は何もしない小太郎達を斬ろうとしたが、寸前で止まった。

「……んで……」

 銀時は顔を歪めて、泣きそうな顔で叫んだ。

「なんで避けねェんだよ!なんで逃げねェ!?何で俺を殺さねェんだよ!」

 三人は銀時に優しく笑いかけた。

「それは銀時がわしらを殺さんと分かってたからぜよ」

「テメェは分かりやす過ぎんだよ」

「それに俺達はお前を殺そうなどと考えたことはないぞ、銀時」

「「「だから、一緒に帰ろう」」」

 銀時を含め、その場にいたほとんどが驚く。

 驚いていないのは言った本人達三人と、若干一名。



「おい。てめぇら今の状況分かってんのか?」



 その若干一名である土方が前に出て来た。

 何故か、刀も抜かずに。

「おい、メガネ。下がってろ。チャイナもだ」

「な、土方さん!?」

「下がれ」

 しぶしぶ二人は引き下がった。

「状況?こんなもの俺達の敵ではない」

「随分と余裕だな、英雄さん達よォ」

 土方は刀をゆっくりと抜いた。

「おい、土方。1人で俺達を捕まえる気かァ?」

「あぁ。十分だ」

 すると晋助と土方は戦い始めた。

 晋助の方が実力は上に決まってる。

 それなのに戦うとは馬鹿なのか?と晋助は考えた。

 土方は刀を交えてる時に、晋助が眉をひそめて、その後ククッと笑ってそのまま刀を下した。

 土方は銀時に刀を向ける。

「白夜叉!ちょこちょこ夜に現れやがって!俺が寝ようと思った時に何度も何度も!テメェいつまでそのドSで俺の睡眠を邪魔する気だ!いい加減やめやがれ!」

 銀時は肩をピクッと動かし、土方を見た。

「あと辻斬りの件もだ!俺達の仕事とりやがって!辻斬りなんぞで夜通報されんのは御免だ!真選組だってそこまで無力じゃねェ!」

「副長、それはどういう――――」

「テメェ等は黙ってろ!」

 土方は隊士たちを怒鳴って黙らせた。

「いいか?俺達はこの江戸を護って取り締まるのが俺達の仕事だ。それを一般人や攘夷志士なんぞに手伝って貰おうとは思わねェ。……まぁテメェは良く厄介ごとに巻き込んだが」

 土方は銀時を睨む様な形で見た。

「いくらやったって依頼料なんて俺はぜってぇやらねェからな!むしろ今度やったら取るからな!早く税金払いやがれ!」

 土方は半分睡眠不足で八つ当たりしただけだが、土方の今の言い方は、『もう人は斬るな』と言っている。

 『白夜叉』とは言っても『殺す』などは言っていない。

 つまり疑ってはいるものの、少しは仲間だと思っているらしい。

 それに銀時が何故辻斬りをやっていたかが土方だけは知っていたようだ。

「……何で知ってんだよ」

「んな事はどうでも良い!テメェ等いつまでそうしている気だ?もしかして捕まりに来たのか?そうかァ、じゃあ早く捕まれこの馬鹿攘夷志士ども」

 銀時はそこでニッと笑う。

「誰が捕まるかよ、税金泥棒」

「だから泥棒じゃねェって言ってんだろーがァァ!!」

「うるせェニコチンマヨラーチンピラ中毒警察」

「チンピラ中毒ってなんだよ!?知らねェよそんな中毒!つーかチンピラ警察でもねェ!」

 いつものように二人でギャーギャー言っていた。

 周りはポカン、とする。

 小太郎と晋助、辰馬はフッと笑った。

「行くぞ、銀時」

 そう言うと小太郎は『んまい棒』をとりだし、地面に投げつけた。

 そして煙幕ができる。



「じゃあな、土方。ありがとな」



 そう言って銀時は小太郎たちと共に逃げていった。

 煙が消えると、隊士たちが土方のもとに駆け寄った。

「……ちゃんと名前言えんじゃねーか」

「大丈夫ですか副長!」

「あぁ」

 そう言って煙草をくわえ、マヨネーズの形をしたMYライターで火をつけた。

 そして煙をふぅっと吐く。

「(ボソッ)次会った時ァ、容赦しねぇぞ」

「?副長、何かいいました?」

「何も言ってねェ。アイツ等逃げちまったし、帰るぞ」


 すると真選組は帰って行った。


 その夜。
 土方はぐっすりと眠れましたとさ。


 チャンチャン♪









「いや、物語終わってねェよ」

 




 七話 三つの明かり (完)




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