気づいた時には……

□四話 敵として
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「……白……夜叉?」




 月詠がかなり驚いていた。

 今まで「銀ちゃん」と言って慕っていたのに、笑っていたのに、今は睨み合っている。

「久々に会ったってのに、その再会が仲間として、じゃなかく『敵として』会うなんてな」


「お前なんかもう仲間じゃないアル!お前なんて

 死んでしまえば良いアル!」

「お前に俺が殺せると思うかァ?」

 日輪だけが気付いた。

 あぁ、これは銀時がやろうとしている事だ。

 このままこの二人を戦わせてはいけない。

「止めな神楽!」

「日輪!私はコイツを殺さなきゃいけないネ!白夜叉は私達を裏切ったアル!人殺しの鬼は殺さなくちゃいけないアル!」

「おいおい良いのか?こっちには人質がいるんだぜ?」

 銀時は刀を握る手に力を込めた。

 神楽は悔しそうに舌打ちした。

「……神楽、あたしなんてほっといて逃げな」

「日輪!?何言ってるアルか!?仲間を護る、それ常識ネ!だから私、日輪を―――」

「おい、ごちゃごちゃ言ってんなよ。テメーも黙れ、人間」

 日輪の事を人間、と言った銀時は、自分が人間じゃないと、鬼だと主張しているように聞こえた。



「銀さん、アンタ―――」



「黙れっってんだよ。女だからって容赦しねぇぞ」

「止めるネ!」

 銀時が日輪を睨むと神楽は叫んだ。



「おい白夜叉!人質をこっちに渡しやがれ!」

「土方さん。人殺しの鬼にそんな事言って通じると思いやすかィ?」

「でもどうやったらあの鬼を殺せるんですか!?」




 もう、止めてあげておくれ。

 もうこの人を、鬼と呼ばないで



 日輪は心の中で何度も叫ぶ。

 もう、壊さないで。

 これ以上壊したら、もう修復不可能になりそうで怖い。

 お願いだから






 誰か止めて。






 じゃないと、銀時が望んだとおりになってしまう。

 いくら銀時の頼みでも、あれだけは聞けない。

 あれだけは駄目。



 銀さん。アンタ何考えてんだい?


 壊したい。


 そう願ってんのは本当だろう。

 護るのが嫌になったのも本当だろう。


 
 でも壊したいのは、

 『自分自身』

 なんだろう?

 自分を護るもの、
 仲間を護るのも、
 つかれちまった。

 だから壊そうとしてんだろう?

 だからあんな事言ったんだろう?






















『俺は殺されたいんだよ、アイツ等に』







 銀さんだから死のうとしてるんだろう?


 だからあんなに挑発しているんだろう?


 あたしを人質の取れば、きっと月詠も怒るだろうと。

 戦って、わざと負けて死ぬつもりなんだろう?

 あたしはね、アンタの本音を聞いちまったのさ。

 苦しくて

 悲しくて

 逃げたいんだろう?





 でもね、あたしには

 何もできない。



 こうしてる間にもこの人は壊れていく。

 あたしに、



 何ができる?







 四話 敵として (完)


 →オマケ&アトガキ

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