気づいた時には……

□二話 知らせ
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 万事屋には神楽や新八がいるはずだから、銀時が不審な行動をとっていないか聞き出す。

 それか銀時を問いただす。そして銀時の疑いを晴らそうと考えたのだ。

 そう思って小太郎は万事屋を尋ねた。

 そしてインターホンを押した。


 だが中からは何も聞こえない。

「銀時君いますかー?銀時君あそぼーよー」

 ふざけて言ってみてもやはり何も聞こえない。

「ぎーんーとーきーくーん!」


 ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピン………………………
 ……………………
 …………………
 ………………
 ……………
 …………
 ………
 ……
 …

 ポーンピンポーン

「ぎーんとーk「ウッセェェェェェェェ!!」んぎゃっ!」

 小太郎がインターホンを連打していると、お登勢が上がってきて小太郎を蹴り飛ばした。

「何やってんだい!誰だか知らねェが、此処にはもうアイツはいないよ!」

 小太郎は首を傾げた。

「リーダーや新八君もですか?」

「……あぁ。そうだよ」

「そうか。三人してどこかに出かけて……」

「いや、そうじゃないよ」

 お登勢は煙草に火をつけ、煙草の煙を吐いた。

「アイツ等はもう、帰って来ないのさ」

「……どういう事ですか?」

「最近辻斬りが出ているのは知ってるかい?」

 小太郎は部下の話を思い出し頷く。

「あれはね、銀時の仕業らしい」

 小太郎は何も言わなかった。

「信じられないだろう?……そして皆アイツの事を『白夜叉』、『屍を喰らう鬼』と呼ぶのさ」

 それには流石の小太郎も驚きを隠せなかった。

 屍を喰らう鬼、と昔銀時は呼ばれていたからだ。

 親に捨てられ、戦場で一人で生きて来た銀時は、人を殺し、その懐を漁って食べ物を探して食べていた。

 そこからついたあだ名が『屍を喰らう鬼』だ。

「そうなったのは全てあたしらの所為だけどね」

 お登勢が悲しそうに言った。

 小太郎は眼を鋭くし、お登勢にそのわけを尋ねた。

「………一ヶ月前、真選組が突然万事屋にきたのさ」


 あたしらはまた上で仲良く騒いでんだろうと思ったさ。

 だけど数が異常だったんだよ。

 それでもただの依頼かと、ほっといたのさ。

 ……だが、それが間違いだった。

 いきなり上でどたばたと聞こえてね、怒鳴りに行ったのさ。

 静かにしろって言いにね。

 行ったら、数名の真選組と神楽が倒れていて、新八たちが銀時を睨んでいて、銀時は悲しい目をしていたのさ。

 その後銀時はにやりと笑って去って行った。

 あとから真選組の副長やらなんやらが取り調べに来たんだよ。

 何があったか聞くと沖田ってやつがこう答えたのさ。

『アイツは人殺しの鬼だから逮捕しようとした』
ってね。

 あたしは言葉失ったよ。

 アイツが人を殺すわけがない。

 だから何かの間違いじゃないかと必死になって言ったよ。

 ……まあ無駄だったけどね。

「皆、銀時の事を人殺しの鬼だと言って、疑ったのさ。……でも少なくともあたしとたまはそんな事ないと言い張って真選組を追い出してやったさ」

 銀時がいきなり壊れちまって、信じてた奴らに信じてもらえず、神楽達を傷つけてどこかに行ってしまった。

「……全部あたし等の所為なんだよ。止められなかった、あたしの責任なんだよ」

 お登勢は頭を下げた。

「憎むならあたしを殺しても構わない。……だから、
 アイツ―――銀時だけは信じてやってくれないかい?助けてやってくれないかい?」

 小太郎は何も言えなかった。

「アンタは銀時の知り合いなんだろう?
 こんなあたしが言うのもなんだけど、銀時はホントはそんな事をする奴じゃない。
 アイツは――――」

「お登勢殿」

 小太郎は少し冷たい声で行った。

「今の話は、本当なんですか?」

 お登勢は頭を下げたまま「あぁ」と言った。

「皆信じなかったと?それで銀時は鬼となってしまった、と?」

「……鬼になったとは思ってないよ。ただ、壊れちまったのさ。
 アイツの心の何かが」

 すると小太郎が優しくフッと笑った。

「……お登勢殿、頭を上げてくれ」

 お登勢は頭を恐る恐るあげ、小太郎の顔を見た。

「お登勢殿が責任を感じる必要はない。
 ……悪いのはあの幕府の狗どもだ……!」

 小太郎は殺気を出し、お登勢はそれに驚く。

 小太郎は何処か、銀時に似ていたのだ。

「必ず、銀時を助けだして見せます」

 そう言うと小太郎は去って行こうとした。

 だがお登勢が呼び止めた。

「もし銀時に会ったらこう伝えておくれ。
 『いつでも帰っておいで』って。





 『護ってやれなくて悪かった』って」


 小太郎は頷いて去って行った。

「……頼むよ。
 指名手配者だろうが、アイツの親友には変わりない。


 ……銀時、アンタの居場所はここにもあること忘れんじゃないよ」


 お登勢はこの呟きが、銀時に届いてほしいと、ただ願った。
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