気づいた時には……

□一話 殺人『鬼』
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「土方さん。また白夜叉の仕業ですぜィ?」

「……あぁ。そうらしいな」

 土方は軽く舌打ちをした。

 最近辻斬りが起きている。

 だがその犯人は捕まえる事は出来なかった。

 いつも辿り着くと犯人は消えていた。証拠も何も残して行かない。だが犯人は解かる。

 皆口々に『鬼』がいる、と言うのだから。鬼は一人しかいない。白夜叉だ、と真選組は考えている。

 あれから、白夜叉は狂ったように笑いだして、土方たちを殺そうとした。あの沖田でさえも、夜兎族の神楽でさえも勝てなかった。相手は木刀だったし、相手も途中で逃げ出したため、幸い死にはいたらなかった。だが、今も神楽と山崎は骨折等して入院している。

「さすがは白夜叉とまで呼ばれた奴ですねィ。感情ってもんはないんですかねィ……」

 それにしても無残すぎる。

 背中を斬られ、手足もバラバラに切られ、おまけに首が無くなっている。それにその屍の懐の財布は全てからっぽになっている。

「これが『屍を喰らう鬼』か……」

 白夜叉は昔は『屍を喰らう鬼』と呼ばれている事が分かった。

 人を殺し、その屍から刀や食べ物などを漁っている、と言う鬼。何故か突然その鬼はそこから姿を消したらしい。

 それが今復活している。

 理由は『白夜叉が鬼だから』『本性だから』と真選組は考えていた。真選組は坂田 銀時が白夜叉にどうしてなったか、『屍を喰らう鬼』になったか、どうしてこのような事をするかの本当の理由が分かっていなかった。

「……まぁもうすぐ捕まるか」

 土方がそう言うのは、実は近々、松平 片栗虎が白夜叉を指名手配することを公表するからだ。

 攘夷志士である桂 小太郎、高杉 晋助同様に指名手配すれば、何処にいるかくらいの情報は掴めるはずだ。もしかしたら同じ攘夷志士として繋がっているかもしれない、と考えた。

「過激派攘夷志士白夜叉、って事になんのか?」

 などと考えていた土方だが、隣で緊張感を全く持たずに大あくびをしている沖田を見て溜息をついた。

「……総悟、殺人現場であくびすんのは止めてくれねェか?」

「そんな事言ったって土方さん。今は夜中の1時ですぜィ?」

 悲鳴が聞こえる、と通報が入ったのだが、入ったのが日付の変わった頃で、もちろん隊士たちは全員寝ていた。それなのに最近この時間帯に通報が入るのが多くなり、皆寝不足なのだ。沖田も土方もその中の一人で、眠気と戦いながら現場に来ていた。

 真選組が寝不足な理由は簡単だ。

 この時間帯に白夜叉が現れ、人を殺しているからだ。白夜叉が現れるたびに人が殺され、通報されて、寝不足なものが増える。
 
 その所為で最近隊士たちの気が引き締まらず、ぼ〜っとして魂が抜けているものや、あくびを一日中している者、仕事をせずに寝ている者が増えている。

 沖田はサボることはあるものの、やはり睡眠不足らしい。
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