闇夜の月光
□第7章
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西暦3034年 6月26日 PM 4:00
「夏輝ちゃん、ここからは本気だからね?」
「はい、よろしくお願いします!」
夏輝vs哲の戦い。
哲の武器は普段は弓だが、今回は剣を持っていた。理由は、弓では範囲が少し狭い、という事と、哲が夏輝と戦うなら弓でなく剣が良いと言ったからだ。(まぁ、後者の理由の方が大きいのだが)
そして、審判の合図で夏輝は駆けだす。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
夏輝が剣を振り下ろすと、哲は余裕の表情でそれを己の剣で受けた。
「うん、良い感じだね。…でも、まだ弱いかなー」
にこり、といつもの笑顔で笑う哲と、必死に剣を持つ手に力を込める夏輝。
対照的な2人だが、今優位に立っているのは間違いなく哲の方だった。
「っ!」
夏輝は一度距離をとった。
「まだ、です!」
夏輝はもう一度哲に剣を振り下ろす。
しかし、それもまた簡単に受け止められてしまう。
「〜〜っ!」
夏輝は悔しさに顔を歪め、冷静さを少しずつ失っていく。
「うん、短期間でここまで来たのは凄いよ。……あと問題は力をうまく使う事だ」
哲はニッと笑うと、夏輝の攻撃を弾き返した。
「力……」
「そう。僕たちが生まれつき持って生まれてきた、人外の力。キミだけの力」
夏輝は哲の言葉を聞いて、ぐっと剣を握る手に力を込める。
哲はそれに楽しそうに目を細め、それから初めて自分から攻撃してきた。
夏輝はその攻撃を力を使って空間を歪める事で防ぎ、自分は横に行って剣を振る。
「そうそう。そんな感じ」
しかし、哲はその行動が読めていたように夏輝の方を見て、剣を受け止めた。
「っ!?」
「僕の能力ね……心を読む、力なんだ。だからね、まだ気持ちが抑えられてない夏輝ちゃん相手なら、負けないよ?」
笑顔を絶やすことなく、哲は夏輝の剣を弾いた。夏輝の剣はその手を離れ、弧を描いて飛んでいく。
「あ……………」
夏輝は呆然としてそれを見送った。
ふと気づけば、哲の剣が尻餅をついた夏輝の首筋にあてられていて、上を見れば哲の変わらない笑顔が見えた。
「終わり、ね?」
「……はい」
哲の言葉に、夏輝は苦笑して応えた。