闇夜の月光
□第5章
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西暦3034年 6月25日 AM 11:30
「「大会?」」
漸く霧夜も力をコントロールできるようになってきた頃。
璃依が明日、『力試し』として大会に参加してもらう、と言った。
「何するの?」
夏輝が問う。
「毎年、“黒龍の使者”では強さを競い合って、順位を決めるのよ。ここでいい成績を残せば、幹部になれるって事。…まぁ、トップになる事も理論上は可能だけど、麻鬼様と雅様に勝とうなんて無理ね。2人は行けても、4くらいかしら…」
璃依の説明に、夏輝は「へ〜」と言って頷き、霧夜は不思議そうに首を傾げた。
「何で4なんだ?麻鬼様と雅様で2人だろ?」
「咲間よ」
「「咲間?」」
2人が首を傾げると、璃依がそんな事も知らないのか、とため息をつく。
「そう。神宮司咲間。現在の3よ。お2人ほどじゃないけど、この人も他とは違って強いわよ。今のあなたたちじゃ無理だと思うわ。因みに、第4位が北村で、その次がアタシよ」
「へ〜。りっちゃん、凄いんだね!」
夏輝が素直に感心した。
「なっちゃん、シド。2人にアタシが教えるのは今日までよ。明日はライバルだからね」
「えっ!?そうなの!?」
璃依が小さく溜息をついて言うと、夏輝は目を丸くした。
「マジ?」
「マジよ」
霧夜の戸惑い交じりの問いにも、静かに頷いた。
「え、ちょ、俺ら勝てる気がしないんだけど…」
「勝てる気、って……シド。いきなりでアタシ達に勝つ気でいたの?」
「うん」
「即答……?」
霧夜の答えに璃依は呆れたように額に手を当てた。
「良い?確かに、2人は普通の奴等よりも力が強いし、戦闘の方も大分強くなったわ。でもね、アタシ達“黒龍の使者”はそんなに甘い所じゃないわよ。……まぁ、その強さなら幹部には入れそうな気もするけどね」
璃依が言うと、夏輝と霧夜は顔を見合わせた。
「んと……何て言ったら良いのか分かんないんだけど…」
夏輝が言葉を選ぶようにゆっくりと言った。
「今まで、ありがとう。…それから、これからもよろしくね」
ふわりと笑う夏輝に、璃依は驚いたように目を見張り、それからニコッと笑う。
「こちらこそ、楽しかったわ。…よろしくね、2人とも」
「俺も!よろしくな!」
慌てたように霧夜が言うと、3人は顔を見合わせてニッと笑った。