闇夜の月光
□第3章
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西暦3034年 4月7日 PM 8:50
ここは霧夜と夏輝の暮らす施設の、2人の部屋。部屋にいるのは霧夜と夏輝の2人だけ。そんな中、霧夜は独り興奮していた。
「うぉ〜!!!やっべ〜!!かっこよすぎる!!!」
「シド先輩、五月蠅いです」
べしりと叩かれて、霧夜は頭を押さえて涙目で夏輝を睨む。
「何すんだよ!!」
「今の時間にそんな大声で話したら近所迷惑です。黙ってください」
「…へーい。…………それよりもさ、やっぱ入るよな?」
霧夜の問いに、夏輝は少しだけ迷ったような表情になる。
「何だよ、入りたくないのか??」
「そう言う訳じゃありません。でも…、やっぱりこの前のあれは怖いんです。私みたいな、臆病な…なんにも力のない人が行っても良いのかなって…」
夏輝は俯き、言う。
「夏輝…。別にさ、良いんじゃね?」
「え??」
あまりに軽い口調に、夏輝は唖然として霧夜を見た。霧夜はにへら、と笑っていた。
「だってさ、麻鬼さんっつったけ?あの人が言ってたじゃん。俺たちは“力持ち”?だって。ってことはだ。俺たちにも分からねェ、未知の力があるって事だぜ?」
「…そうですよね……」
「良いか?俺は、誰が何と言おうとも、“黒龍の使者”に入る!それだけは、絶対に揺るがない!…もう一度聞くけど、お前はどうする?」
霧夜がニッと笑い、夏輝を見る。
「…行きたいです。…私も行きます…!」
「じゃ、明日学校行くんだから、早めに寝るか」
「…今から寝るんですか?流石に速すぎません?」
「良いんだよ!もう眠ィんだよ!!」
そう言って、霧夜は布団をかぶって動かなくなった。
夏輝はそれを見て苦笑すると、同じように布団を被った。
霧夜と夏輝が布団に入ったのと同じ頃。
「麻鬼。結局、あの2人はどうするつもりですか?」
雅は麻鬼の部屋に来ていて、麻鬼に問いかけた。
「…彼らが入りたいというのならそれも良し、入りたくないというのも良し。そんな所か」
麻鬼は無表情の中にほんの少しだけ楽しそうな色を混ぜてそう言った。
雅は「そうですか」とだけ言った。
「……あの2人が少しでも変えてくれればいいのだが…」
麻鬼の呟きは雅には届かなかった。