Silver Sword
□第4章
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一ヶ月が経った。
その間に死んだ者は二千人。
そしてつい最近、第一層の迷宮区が攻略された。
最初の内は死者の数も多かったが、第一層攻略後、目に見えて減少し始めた。
ギンとシンはその一ヶ月間で順調にレベルを上げ、現在の2人のレベルはどちらも33。大体良いペースだと言ってもいいくらいの順調さだった。
2人はとりあえずパーティーを組み、一応2人で≪ギルド≫を作っていた。
≪ギルド≫とは、巨大グループには属さなかったプレイヤーたちの作った小集団の事である。因みに、まだ名前は決まっていなかった。
現在の2人のホームタウンは第二層の小さな宿屋だったが、その内お金―――この世界では≪コル≫という単位で表記される―――を貯めて、一軒家を買いたいと言うのが今の所の大きな目標でもあった。
* * * * *
「シン〜。今日はこの辺でやめようぜ〜?腹減った〜」
お昼時になるかという時、ぐでーっと大きな岩に腰をおろし…というかその上に寝そべって言うギンに、その近くで今日の戦闘で得たアイテムを整理していたシンは、少し考えるようにしてからそうするか、と言って立ち上がった。
「じゃ、帰るか」
「早く飯食いに行こうぜ!」
「お前なぁ…」
呆れた様に言うシンだが、グ〜っとお腹が鳴ると少しだけ頬を赤らめて速足になった。
それをニヤニヤと見ていたギンだったが、シンの歩く速度が異常に早くなったのを見て、楽しそうにその後を追いかけた。
毎日毎日2人は朝起きて朝食を食べ、その後は直ぐにレベル上げの為にフィールドへと向かう。そしてだいたい良い所で適当に切り上げて帰る、というのが習慣になっていた。
「あ゛ー……今日は何処で飯食う?」
「……テメェ…さっきからそればっかじゃねェか」
「しょうがねーだろー?」
腹減ってんだから、とギンがのんびりと答えれば、シンは慣れたもので小さくため息をついただけでそのまま歩き続ける。
しかし、そんなシンの歩みが止まった。同時にギンも止まる。
「………………殺気?」
「だなァ。…どうする?行くかァ?」
「……行ってみっか。最近オレンジとかレッドも増えてきたみてーだし」
シンはそんなギンの答えを聞き、相変わらずお人好しだなァ、と呟き、ニヒルな笑みを浮かべて殺気の方向へと歩を進める。
オレンジというのは、犯罪を行ったプレイヤーはカーソルがオレンジになるので、犯罪者プレイヤーの集団は≪オレンジギルド≫と呼ばれる。特に積極的にPK(=殺人)を行う者は≪レッドプレイヤー≫と呼ばれているのである。