Silver Sword
□プロローグ
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「銀ちゃん…」
「銀さん…」
場所は万事屋銀ちゃん。
ここのオーナー、銀時は寝室の中央に寝ていて、その周りに2人の子供――新八と神楽がいる。2人は泣きそうな表情で銀時の顔を覗き込んでいる。
銀時はうっすらと目を開け、それを見ると少し苦しそうだが苦笑した。
「…そ、んな、泣きそう…な、顔、すんな、よ……」
「でもっ、銀ちゃん!」
神楽は泣くのを必死にこらえて、そう言う。新八は目にいっぱいの涙をためてそれを見ている。
「…悪ィ、な」
銀時はそう言うと、震える手で神楽の頭を撫でた。
「でも、さ。…俺、幸せ、だった、ぜ?……お前らが、こんな、俺、と、一緒にいて、くれた、から」
「銀、さん…」
「銀ちゃん!」
銀時はおよそ2ヵ月ほど前から重い病気を患っていた。1ヵ月前になるともう動くことも辛くなってきて、1週間前にはもう寝たきりになってしまった。
神楽と新八は、そんな銀時と一緒に居続けた。
同じ部屋で寝て、同じ部屋で起きる。同じ部屋で食事をして笑う。
神楽は定春の散歩の時、新八は買い物と家事の時以外は銀時から決して離れなかった。
妙は自分の仕事の時以外は大体万事屋に来ていた。
お登勢やたま、キャサリンも見舞いに来た。来るたびに神楽とキャサリンが馬鹿みたいな会話をして喧嘩し、お登勢が一喝してそれを止める。そんな賑やかな時間を過ごした。
真選組の隊士たち―――特に近藤、土方、沖田、山崎も見舞いに来た。近藤はバナナ(大量)を、土方は大きなマヨネーズ(大量)を、沖田はムチと彼が良く聞くと言う落語のCDを、山崎はあんパン(大量)を、それぞれ持ってきた。…まぁ、ほとんど神楽の腹の中に消えたが。
真選組などが来ていない時に小太郎とエリザベス、辰馬も来た。更には、晋助まで来たのには神楽と新八は大いに驚かされた。
他にも、吉原や高天原、柳生家、オカマ達…銀時が関わって来た人たちは皆、銀時を心配して見舞いに来た。
銀時はそんな仲間達がいてくれて、心から幸せを感じていた。
それと同時に自分の死期を感じ、まだ一緒に笑っていたかったと思うことも多くなってきた。
「銀ちゃん。私も銀ちゃんと会えてホントに良かったと思ってるアルよ?」
「もちろん、僕もですからね」
「「銀ちゃん/さん、ありがとう!」」
ニコッと笑う2人。銀時はそれを見て嬉しそうに笑った。
「ホント、……ありがと、な……」
そこで銀時の意識は消えた。
「……ちゃ、……銀、ちゃん……銀ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」
「銀さん…!ッ……うっ…く……」
神楽が泣き叫び、新八は涙を流してしゃくりあげる。
そんな2人の目の前で、銀時は静かに息を引き取った。
銀時の顔はとても幸せそうだったと言う。
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