銀色×僕SS

□第十八話
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連勝は今、現在進行形で戸惑っていた。原因は二つ。

一つはもちろん銀の事である。こうなることは何となく聞かされてたし、目の前でこうなったのは初めてじゃない。だが、治療はいつも松陽が行っていたのでよく知らない。そしてここまで酷い事態にはなったことがないので、ヤバいのかと焦る。




そしてもう一つが

「それにしても、お兄さんが女かぁ。強い子を産んでくれそうだ」

「まだ言ってるか。戦闘バカが」

「あはは。今はもうそこまで強くなくなっちゃったけどね。血で興奮することもないし」

「今のテメェはただの人間だろ。んなに強かったらこえーよ」

「アンタに言われても説得力ないけどね、地球の喧嘩師サン」

この少年と運転している青年のこと。

晋助と知り合いなのはまだ理解できるが、訳の分からない言葉をたまにいう。

『夜兎族』とか『地球の喧嘩師』とか。

そして『血で興奮』とか『殺す』とか、とにかく未成年が話す内容ではない。……というか可愛い顔して少年が恐ろしい事を言うのが恐ろしい。

それに、少年は銀の事を『銀髪のお侍さん』と言ったり、『お兄さん』と言ったり、『お侍さん』といったり……。

明らかに男扱いしている。最初にあった時の反応とかいろいろおかしかったが、今もどこか違和感を覚える。


晋助と銀の事を昔から、自分達が生きている『今』よりもっと昔に会っているかのような……。



「っう……」

銀が呻くと、ハッとして学ランをチラリと捲った。

すでに症状が出始めていて、銀が己の手で抑えている口元からすでにとがった牙が出ていた。

「ねぇ、そこのお兄さん」

少年が後部座席にいる連勝に話しかけてきた。

「へ?お、俺?」

「そうそう。お兄さん……じゃなくて、お姉さん、かな?になんで学ランかぶせてるの?具合悪そうなのに。取りなよ?」

「あー……。こいつ、顔見せたくないらしくてさー」

少年は「お姉さん、意外と乙女だね」とか無邪気に笑って言う。


「お兄さんは、お姉さんや晋助と友達なの?」

「晋とは友達かなー?あ、コイツ―――銀とは幼馴染だぜ」

「今度はそこのお兄さんが幼馴染……ねぇ?」

 少年は晋助をみて笑った。

「とられちゃったね、晋?」

「気色悪いからその名で呼ぶんじゃねェよ、シスコンが」

「シスコンじゃないよ。失礼だなぁ、もう」


少年は頬を膨らませて拗ねた。こういう所をみると子供らしいと思える。


「そう言えば名前、聞いてなかったね。お兄さん名前は?」

「俺は反ノ塚 連勝。よろしくなー」

「俺は尋澤(ヒロサワ) 神威。で、コイツは阿伏兎」

少年――神威は青年を親指で指して言った。青年――阿伏兎は「よろしくな、兄ちゃん」と言って、また運転に集中した。


「晋助とお姉さんは?」

「あれー?知り合いじゃねぇの?」


「知り合いだよ。『今』は初対面だけどね」


今、という意味が解らない。銀も晋助に『昔だったら〜』とか『記憶が〜』とか言っていたが、いつの事を言っているのか分からない。

「……俺は陽雷 晋助で、雷獣。銀は天狼聖 銀で、狼男だ」

少年は驚くわけでも無く、へ〜、という。


「テメェは先祖がえりじゃねェのか?」

連勝もそれは気になっていた。

神威は阿伏兎が車を出す前に「君達『も』先祖がえり」と言った。という事は神威自身、もしくはその周りに先祖がえりがいるという事だ。


「俺は先祖がえりじゃないよ。俺は、ね」


少年は笑った。

なら、その運転s「阿伏兎も違うよ」どうやらその青年も違うらしい。

「じゃあ誰が「ところで連勝も先祖がえり?」おい、聞け」

晋助が鋭く睨むのをサラッと受け流して、笑っていられる神威はただ者じゃないと思った。

「俺、一反木綿なんだー、ほら」

どろんっと連勝は変化してみせた。少年は少し驚いた後、

「なーんだ、連勝弱いのか。つまんないの」

と失礼な事をいって少し残念そうにした。

「ひどいなー」といって連勝は人型に戻る。

「あ、お姉さんは強いんでしょ?」

が、直ぐに切り替え、目をキラキラとさせる。晋助はため息をついた。

「こいつも俺も、昔とそう変わらねェよ。まぁしょっちゅう戦うわけじゃねェから少しは弱くなったかもしれねェがな」


「えー。……でも楽しみだなぁ。今度殺りあってよ、お姉さん。って、お姉さん、今大変な状態だったね」



神威は銀を見て苦笑した。


   
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