銀色×僕SS

□第十七話
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『1939年9月1日に、ドイツがポーランドへ侵略したことが第二次世界大戦の始まりとされ――――』

一限から日本史とは面倒だと、つまらなそうに欠伸を咬み殺していた。

「(何で第一次世界大戦と第二次世界大戦があるわけ?世界でなんで二回も戦争?一回で終わらせろや。二回もやっから日本も負けるんだよ。一回目で、ヤッター勝っちゃった☆で終わっときゃあ良かったんだよ。あ、でも始めたのは日本じゃねェよな?アメリカに仕掛けたのは日本だった気がするけど。ってことは日本はとばっちりって事か?いや、まてよ?嫌だったら断れば良い訳だし、その当時日本は調子のってたって聞いたしな……。あれ?まず戦争って断れんの?断れたら戦争なんてどこもしなくね?)」

 とか訳の分からない事を考えている銀の隣では、連勝が机に突っ伏して爆睡していた。

「一限から寝るのかよ」と苦笑した。

この世界で生まれ変わって気付いた事は、今までいた世界とこの世界の歴史が似ているようで似ていない事。

天人がいない代わりにペリーが黒船で来航したり、真選組が新選組だったりと様々だが、一番驚いたのは名前が似すぎている事だった。

それぞれ一文字ずつくらいしか違わない。それに、吉田 松陽(こっちでは松陰らしい)が処刑されている。

それに坂田 金時という人物もいたらしく、自分とよく似た顔だった金髪のストレートパーマの男を思い出した。

……まぁ、やってる事はもちろん違うのだが。



『――それではここを天狼聖。読んでくれ』

「っ!は、はい。第二次世界大戦の戦域を大別すると、ヨーロッパと北アフリカ、そして西アジアの――――」


急にさされたことに驚きつつも、教科書に書かれている文章を読む。

寺子屋で真面目に授業を聞いてたらこんな感じだったのかなぁ、とか呑気に考える。

『よし。そこまででいいぞ』

きりのいいところまでいき、教師がストップをかけたので、銀はそこで教科書を読むのをやめた。ほっと小さく安堵の息をつく。

未だに爆睡中の連勝を見て「人ががんばってる時に寝やがって」と思ったが、前世で幼いころは松陽の授業など全く聞きもしなかったことを思い出し、昔の自分を見ているようで苦笑した。



ピカッ



「(やっべぇ……!!)」

突然、視界が赤く光った。

チカチカと目の前が点滅する。

そして徐々に光はなくなったが、代わりに景色が真っ赤に染まった。赤い物を見たとかそう言うんじゃなく、赤いサングラスをかけたように、周りの全ての色が赤く見えた。

銀は焦って口元を覆った。

少しだけ気持ち悪い物ががこみ上げてくる。

「(くそっ。なんで授業中になるんだよ!!)」
休み時間なら何とか対処できたが、今は授業が始まったばかりで、終わるのにはまだ時間がかかる。

口の中から何かが出てきてちくりと手を刺した。

血は出たりしないが、少し痛い。

歯をギリッと食いしばる。

胸の中で何かがうずくのを必死に堪えた。

運が良い事に、銀の席は一番後ろで、しかも教師は黒板に字を書いている途中のため、こちらに気づく気配がない。もちろん教師もである。

「(どうする、どうする俺!!)」

保健室まで歩く余裕などない。

それに、きっと保健室に行けても、そこの教師を困らせるだけだ。

だが、ついに視界がぐにゃりと歪み始めた。

「(うそだろ!?)」




気持ち悪い。気持ち悪い。



目をぎゅっとつぶって何も見えないようにする。落ちつけ、落ち着け、と何度も自分に言い聞かせる。

だが、もう進行しているようで、体制を崩しがたんっと大きな音を立てた。

当然、教師も、クラスメイトもこちらを向く。周りがざわめいているが、銀はそれに構っている暇ではない。


「(やばいやばいやばい……!!)」


『おい、大丈夫か、天狼聖?』

 教師が近づいて来て話しかけてきた。

「(来んじゃねーよ、馬鹿教師!)」

 そうは思っても口に出せるわけがないので、とりあえず黙っている。というか、しゃべれないのだ。

『顔色が悪いぞ?保健室に――』

「あー、俺が連れて行きます。ってか、帰らせてきまーす」

 後頭部をかきながら、ふわぁっとあくびをしてそう発言したのは連勝だった。

「(連勝!?)」

 銀は苦しみに耐えながらも、立ち上がって近づいてくる連勝を、うっすらと目を開けて見た。

『帰らせるって……そんなに重症なのか?』


「え?あー……重症なの?」


 本人に訊くな!と言おうとしたが、帰りたいのは本当なので曖昧に笑ってみせた。

 すると今度は突然ガラッと教室の前の方のドアが開いた。



 それは一年生で授業をうけているはずの晋助だった。


  
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