銀色×僕SS
□第十三話
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凜々蝶は部屋の中で小さく丸まっていた。
理由は簡単。
銀と仲直りするために買うはずのケーキも買わず、更に中を悪くさせてしまったからである。
「はぁぁぁぁ」
もはや、もう溜息しか出てこなかった。
これから本当に仲直りなんてできるのだろうか?
そう思っていると、ふいにチャイムが鳴った。
「?誰だ?」
玄関の方へ歩いていき、ドアを開けるとそこにいたのは少し焦った様子の卍里だった。
「君が来るなんて珍しいな。何の用だ?」
「なんか知らねぇけど、変態狐野郎と陽雷 晋助が戦ってんだよ!!」
「はぁぁ!?」
前は蜻蛉と戦い、今度は晋助ときた。
何度戦ったら気が済むんだ、と心の中でつっこんだ。
「それ位君が止めればいいだろう?」
「無理だって!あそこの場の空気悪すぎるし!」
そこまで酷いのかと少し心配になり、闘っているという場所、ラウンジに向かった。
エレベータに乗り、ラウンジについた瞬間ものが倒れるようなガタンッという音と、金属同士がぶつかるような甲高い音が聞こえた。
「!!刀を使っているのか!?」
凜々蝶は急いでいく。
すると、滅茶苦茶になったラウンジの真ん中で、変化した姿をした二人が戦っていた。
しかも双方殺気がハンパではなかった。
片方は双熾。
もう片方は紫色の髪にオレンジと黒色の猫のような耳と二本の尻尾が生えていた。
左目が包帯で巻かれていて、少し長い前髪が包帯にかかっている。
服は黒に近い青色の長いロングコートのようなもの来ていて、戦争に出ているかのような格好だった。
だが、その服はぶかぶかで、邪魔そうだった。
それが晋助だとすぐに感じ取った。
「やめろ!!二人とも何をやっている!!」
凜々蝶が声をかけると、双熾がニコリと笑った。
「凜々蝶様どうされたのですか?」
「よそ見すんなよ双熾」
キィィィィン!!
激しく戦っているため、こちらの声はそれほど聞こえないだろう。
ならば、直接止めるしかない。
「御狐神君やめろ!!」
「……今回は止めません」
「テメェはひっこんでろ」
晋助が凜々蝶をぎろりと睨むと、双熾が庇うように前に出た。
「凜々蝶様は傷つけさせません」
「はっ。銀を散々傷つけておいて、そいつはダメか?ずいぶんと主人に忠実だな」
「僕は凜々蝶様の忠実な犬ですから」
「犬、ねぇ」
晋助は馬鹿にするように笑った。
「誰に対しても同じだったテメェが、そんな野郎の味方すんのか?」
「……」
「銀を置いて帰ってくるような屑女にテメェが使える意味が俺ァわかんねェなァ。銀の気も知らねェで、心を傷つけて。……テメェ等は銀の事が嫌いかよ」
「なっ!?違う!!」
凜々蝶が言うと、晋助は冷たく睨みつけた。
「違う?何がだ?俺は言ったはずだぜ、『今度銀悲しませたりしたら承知しねェ』ってな」
凜々蝶は黙り込む。
「テメェは何がしたいんだよ。今日は銀がテメェと二人で話したいって言ったから、俺は引き下がったが、何だこの様は。銀ほっぽってのこのこ帰ってきやがって。もし銀が襲われてたらどう責任とんだァ?」
「そ、れは……」
「これ以上、凜々蝶様に暴言を吐くのは許しません」
双熾が刀を再び構えた。
「双熾、どけよ」
「どきません。貴方が凜々蝶様を傷つけるような事をしないと言うならどきましょう」
「止めんか!!」
「……ルセェ!!」
晋助が斬りかかった。
あまりの威力に双熾がよろける。
その隙を晋助は見逃すはずもなく腹を蹴り飛ばす。
双熾は軽く吹き飛んだ。
少しせき込む。
「御狐神くっ――!?」
「人の心配してんじゃねェ」
「凜々蝶様っ!!」
いつの間にか目の前に晋助がいて、刀をふり降ろそうとしていた。
双熾が助けに行くにしても、自分が受け止めるにしても間に合わない。
振り下ろされる刀がやけにゆっくりに見え、来るであろう痛みにぎゅっと目をつぶった瞬間
ゴンッ
「いっ!?」
「??」
何かがぶつかった音がし、目を開けると刀を落とし、頭を抱えてうずくまってる晋助がいた。
「凜々蝶様ご無事ですか!?」
「あ、あぁ……。いったい何が?」
ふと横を見ると木刀が落ちていた。
そこには『洞爺湖』と彫られている。
「晋助!テメェ何やってんだ!?」
怒った様子の男性の声が聞こえた。
その方を見ると、背が180前後で、紅い瞳に、少しはねていて腰までなびく銀髪を下でひとつにしばっており、灰色の耳と尻尾が生えていた。
口には二本の牙が生えている。
白いブラウスに、青のズボンをはき、上には海賊っぽいコートのような物を着ている。
黒いブーツも履いていた。明らかに先祖がえりである。
その男はずかずかと入って来た。
先程は遠目であまり分からなかったが、近くで見ると、とても美形で、凜々蝶は少しの間見惚れていた。