銀色×僕SS
□第十話
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「よし」
凜々蝶は部屋で、ひそかに決意していた。
「今日こそ、銀に言うんだ!」
今日は休日で学校も休み。
なので会える機会が多い、という事だ。
銀に今日こそ謝って、仲直りをしようと思っていた凜々蝶は、まず、何かお詫びのものをもって行こうと考えた。
そこで、買いに行くことに決めた。
「銀は確か甘いものに目がなかったな……。チョコレート、とかケーキにするか……」
まず、双熾に言ってついて来て貰おうと思い、出かける支度をして、メールしようと思ったその時
ピンポーン
インターホンが鳴った。
「?誰だ?御狐神君か?……いや、そんなわけ……」
双熾は自分から尋ねてくることはまず無い。
だから、カルタか連勝辺りだと思った。
「はい、どちら様で―――」
「あ、おはよう凜々蝶」
そこにいたのは、私服姿の銀だった。
「(まだ心の準備がー!!)何の用かな?僕は忙しいんだが?」
「あ、ごめん。ちょっと買い物に行くんだけど、付き合ってもらえないかなーと思って」
まさかのお誘いに、凜々蝶はかなりパニック状態になっていた。
だが、ある意味これはチャンスだと思った。
「でも、忙しいなら、いいや。ごめんね」
「ま、待て!」
行こうとした銀の裾を掴んだ。
「凜々蝶……?」
驚いている銀に、凜々蝶はハッとして、手を離し、そっぽを向いた。
「ふん。丁度僕も買い物に行こうかと思っていたところなんだ。まぁ、付き合ってやらなくもなくもなくもないが?」
すると銀の顔が輝く。
「本当!?じゃあ早速行こう?さ、支度して」
凜々蝶は元から支度はほぼできていた為、携帯と財布をカバンに詰め、再び出て来た。
「じゃあいこっか」
「あ、まだ御狐神君に――」
「大丈夫。許可は取ってきたから」
よく駄々をこねなかったな、と思った。
いつもならトイレにまでついて来ようとする双熾が連れて行けと言わなかったのは、相手が銀だったからだろうか?
少し考えたが、そうだろうな、という結論に至った。
「そう言えば銀は何を買うんだ?」
「んー、いろいろ?引っ越してきたばっかだし。凜々蝶は?」
何かはぐらかされた気がしたが、最後の質問にドキッとする。
まさか、仲直りの為のお詫びを買いに行くだなんて本人には言えない。
「み、御狐神君と一緒にコーヒーを飲む約束をしていてな。そのお菓子を買いに行こうと思ったんだ」
「へー、双熾と、ねぇ?」
銀は何かを読み取ったように「ふーん」と言った。
「結構仲良くやってるんだ?」
「ふんっ。勝手にあっちが懐いて来たんだ」
「それでも、よかったじゃん。信頼できる人、好きな人が出来て」
銀が微笑んだとき、自分の事を心配してくれていたのだと感じ、少し嬉しくなった。
が、銀の言葉を思い出し、ハッとした。
「す、好きな人!?御狐神君が!?」
「え、付き合ってるんでしょう?」
「だ、誰が付き合うか!彼とはただの―――」
「本当にー?」
銀はニヤニヤとしていた。
凜々蝶の顔は徐々に赤くなっていった。
「ち、違うと言ったら違う!」
「じゃあそういう事にしといてあげる」
銀はクスリと笑って、また歩き始めた。
そんな銀にふと思う。
もう、あの事を気にしてはいないのか?
いや、きっとまだ自分の事を許してくれていない。
だって―――
「凜々蝶?疲れた?」
そこで凜々蝶は我に返った。
「少し考え事をしただけだ」
そう言って再び歩き始めた、のだが。
「バスで行くのか……?」
「そうだけど?」
凜々蝶はそこまでバスに乗ったことがない。
何故なら、何処に行くにも家の車だったからだ。
「もしかして、バス苦手?」
「ふんっ。そんなわけ無いだろう?」
「?なら良いけど」