銀色×僕SS

□第八話
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「じゃあな、チビ助。授業サボるんじゃないぞ?」

「サボらねぇし、俺はチビじゃねェ」

「何を言っている。俺よりも小さいではないか。どうせ170もいってないのだろう?」

 晋助は図星だったようで黙る。

「という事でまたな、晋助。もとい低杉 チビ助」

「ッテメェ!」

 晋助は掴みかかりそうになったが、辰馬に止められる。

「二人ともやめるぜよ。まったくいつまでたっても子供じゃのう」

「いつまでたってもってなんだよ。会ったの今日だろ?」

「およ?なんでかのう?」

「辰馬……もしや貴様思い出したのか?」

「なにがぜよ?」

 辰馬は訳が分からないと言った様子で首を傾げた。

「……いや、なんでもない。行くぞ辰馬」

「?ヅラ?」

「ヅラじゃない、桂だ」

 小太郎は自分の教室へ向かって行った。

「何だあいつ?」

 晋助も小太郎の言った意味が解らなかったが、特に気にすることもなく教室に入った。

「げっ、陽雷 晋助」

 卍里がもの凄く嫌そうな顔で晋助を見た。

 晋助は苛めてやろうと思ったが、近くに凜々蝶がいた為、止めたのである。

「チッ」

 晋助は不機嫌そうに椅子に座った。

 凜々蝶は内心ため息をついた。そして罪悪感でいっぱいだった。

 そう言う自分が大嫌いだった。

何故素直に「おかえり」「ごめんなさい」。たった二言が言えないのだろうか。

 更に銀の心を傷つけただけだ。そして仲直りする道が遠くなっただけではないか。

 そんな自分がやはり嫌いだった。

 だから晋助に嫌われていても、憎まれてもしょうがなかった。

「……ちよちゃん、喧嘩中?」

 カルタがお菓子を食べながら訊いてきた。

「……喧嘩なら、良かったな……」

 ただの喧嘩なら、仲直りして、全てがおさまるのに。そう思った。

「お前、銀姉のこと嫌いなのか?」

「というか銀姉?」

「……渡狸のお姉さん?」

 卍里が少し顔を赤らめ、首を振った。

「ち、違ェよ。銀姉は俺をアイツ等から護ってくれた恩人なんだよ」

「恩人?アイツ等とは夏目君や御狐神君のことか?」

「あとは陽雷 晋助とか変態ヤローとか……!」

「苛められていたのをかばってくれた、という事か?」

「……そういう事だ。あれは女神のような……はっ!///」

 卍里はカルタを見た。

「……渡狸あの人好き?」

「ち、違うんだカルタ!これは、あの、そう言う意味じゃなくて!」

「……私も好き」

「恋愛感情とかじゃ……え?」

「……でも、少し悲しそう」

 カルタはモグモグとお菓子を食べながら言った。

「悲しそう?銀が?」

 カルタは飲み込んでから、こくりと頷く。

「……ちよちゃん見てる時、優しい顔してた。でも、悲しそうな顔する。……陽雷と話してる時もそう」

「陽雷 晋助とも?……確かに前に「少し寂しい」っていってたな……。それにお前にいつか謝りたいって言ってたぜ?」

「僕に?なんで銀が……?」


 凜々蝶が驚き、そして首を傾げると「おい」と後ろから声をかけられた。

 晋助が少し、いやかなり不機嫌そうに近づいてきた。

「テメェ、銀が何で転校したのか知ってんのか?」

「銀が転校した理由……?」

 凜々蝶は少しためらった後、ゆっくりと、悲しそうに言った。

「……銀がお父様に逆らって、それで、お父様の所為で……」

「よく分かってるじゃねェか」

 凜々蝶が下を向く。

その様子に卍里が少し慌てる。

「お、おい、それ言いすぎじゃ―――」

「黙れ弱虫豆粒」

「豆じゃねぇし弱虫じゃねェ!俺は「意気地なし」だって、ちがーう!!」

 ギャーギャー言う卍里を軽くあしらった後、凜々蝶を見る。

「テメェは銀とお前、どっちが悪いと思う?」

「それを何故君に言われなければいけない?」

「良いから答えやがれ」

 晋助は睨む。

「……僕が悪い、とでも言っておこうか」

 そして悪態をついた事を悔やむ。

だが晋助は怒ることなく言葉を続ける。

「銀は自分が悪いって。お前に申し訳ない事をしたって言ってたぜ」

「だからなんで銀が―――」




「銀だから、だ」


 晋助はため息をつく。

「銀は人の所為なんかにしねェし、自分を責める。自分はどうなっても、他人を護りたい。そう言う奴なんだよ。だから他人の為に動いて、他人の為に笑ったり、怒ったりする」

 凜々蝶はハッとする。

いつもそうだった。独りだった自分に手を差し伸べてくれた。

苛められた時、護ってくれた。




 じゃあまさか逆らったって言うのは……?




    
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