気づいた時には……
□十八話 嫌な知らせ
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黒夜叉が色んな者たちを拾ってきて数日が経った。土方への怒りも少し覚めたのか、銀時たちは普通に黒夜叉の船で暮らしていた。
因みに他にも黒夜叉は鬼兵隊や桂派、快援隊の人たちも拾ってきてしまったようで、割と静かだった船が、今は笑い声などが響いている。
定春も一向に帰ろうとはせず、結局銀時のそばから離れることはなかった。定春を一番可愛がっているのは以外にも(?)黒夜叉こと千代だった。餌を進んであげているし、定春も千代にずいぶんと気を許していた。噛みつくこともない。
ただ、定春は他の人には良く噛みつくので大変である。
特に松陽は銀時同様に好かれたのか、よく定春に噛みつかれていた。そのたびに、教え子四人たちは焦っていた。噛まれた当の本人の松陽は「元気ですねぇ」とか呑気なことを言っていたが。
小太郎はエリザベスと会話をし、晋助は万斉と三味線を弾き、銀時は定春の体に寝そべり昼寝をし、松陽はその銀時の頭を撫で、千代はまた子とお茶を飲んだりしていた。
辰馬達(快援隊の人々)は商売を続けるようで今準備をしており、この場にはいない。
そんな和やかな空気の中、定春の耳がピクリと動いき、身体をムクリと起こした。その所為で寝そべっていた銀時は思いっきり床に頭を打ち付け、「いでっ!」と変な声を出して、頭を抱えてうずくまる。
他も異変に気付いたようで、話していた者は口を閉じ、三味線を弾いていた二人も引くのをやめた。
「大丈夫ですか、銀時」
「いてて。あー、まぁ一応。ってか、どうした定h――ぶっ!!」
銀時が頭をさすりながら体を起こし、定春がじっと見ている襖を見ると、突然凄い音がしてその襖が吹っ飛び、銀時の顔面に直撃した。
「ぎ、銀時様!?」
また子が驚いて銀時に近寄り、大丈夫か、と訊くと銀時は横になったまま、「大丈夫……じゃないかも」と赤くなった鼻を涙目になりながらさすった。
定春がうー、と威嚇するように唸ると、襖が会った所に一人の青年が足を上げて立っていた。
「あ、やっといた。おーい阿伏兎ー。お兄さんたちいたよー」
「いたよー、じゃねェよこのスットコドッコイ。手荒な事するなってあれほど言ったのに……」
そこにいたのは神威、そして、その後に来たのは阿伏兎だった。
どうやら襖は神威が蹴飛ばしたらしい。
「なんでテメェ等がここに……」
晋助も驚いて三味線をやめ、神威を見ていた。
「そりゃあお兄さんに会いに……あり?」
神威は晋助を見て首をかしげた。
「晋助。目、直ったの?」
「直ったわけじゃねェが、まぁそんなとこだ」
幻術などの話をするのは面倒なので省く。
神威はさほど興味がないのか「そう」と納得していた。
「で、お兄さん。辻斬りやったらしいね」
銀時は鼻をさする手をピタリと止めた。
一瞬にしてその場の空気にピリッと緊張が走る。
同時に晋助と小太郎、そして松陽がわずかに殺気を放った。また子はビンビンに殺気を放ちながら神威に銃口を向けた。
千代と(サングラスに隠れてはいるが)万斉は目をスッと細めた。
「そんなに殺気立たないでよ。俺は妹みたいに馬鹿じゃないから安心して」
ニコリと神威は笑うが、殺気が無くなることはない。
「……俺が辻斬りをしたのは本当だ。だとしたらテメェは俺を真選組につきだすか?」
「しないよ。そんな事したらお兄さんと戦えなくなっちゃうじゃないか。第一真選組にお兄さんをつきだしたところで俺にはなんの得にもならないし、やってやる義理もない」
「つまり、アンタはコッチの味方って事ッスか?」
「それはちょっと語弊があるかな。俺はアンタらの味方でも、幕府の味方でもない。けど、こっちにいた方が面白そうだから」
そこまで肩入れする気はないのだろう。けれど、銀時を信じる者がまた少し増えたことが嬉しい。その場にいた者がそう思った。
敵ではない事が分かると、それぞれ殺気を引っ込め、また子は銃をしまった。