気づいた時には……

□十七話 似ている魂
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「デケェ事件?なんだそりゃ?」

銀時が首を傾げると、土方はため息をつく。

「テメェの事くらいテメェで察しろ」

「へ?俺?俺なんかしたっけ?」

「最近の事ぉ!覚えてろや!!辻斬りの事だ!!辻斬りの罪きせられただろーが!」

そこでやっと、銀時はあぁ、と納得した。


「ところで多串君はどこから俺が犯人じゃないって思ってたんだ?」

「大串じゃねェ。……最初からだ」

そう言うと、晋助が眉をよせる。

「だったらなんで銀時を捕まえようなんざ真似をしたんだァ?」

「仕事上、疑う事も必要だからな」

「流石副長さんですねー。庶民の心を傷つけておいて、自分は仕事を全うですかー。はー、すごいですねー」

「おい、喧嘩売ってんのか?」



いつもの調子が戻って来たところで、本題にうつった。

「土方。貴様、何処まで知っている?」

「さぁな。簡単に教えるかよ。……と、言うべきなんだろうが、これも仕事だからな」

その言葉に、松陽はクスリと笑った。

土方はその事が少し気に食わなかったのか、頭をガシガシとかいた。

「……俺が分かってる事は二つ。一つは天導衆の分裂。もう一つは、この事件がどうして起こったか……くらいだ」

「ほう。そこまでわかっているとは意外だ。鼻が良くきくらしい」

黒夜叉が褒める(?)と、土方は短くなった煙草を、携帯灰皿で火を消した。

「そうは言っても、俺が知っているのはごくわずかだ。天導衆の分裂に関しては、意見の食い違いか何かで決別し、三対一になっている。あとはツヴァイ様のほうが支持が高いが、アインツ様を恐れているものが多い……というくらいしかわかってない」

土方は少し不満そうな顔をしていたが、逆に銀時たちは自分たちが知らないことを土方が知っていることに驚く。黒夜叉は面白そうに聞いている。



「この事件については、まずs――坂田が辻斬りの犯人だという噂が流れ目撃情報もあること。坂田がその後奴の手下を殺したこと。あとは首謀者……くらいか?」


「なんだ、それだけッスか。私達が調べた方が多いッス。真選組も落ちたもんッスね」


また子が言うと、土方は軽く睨みつける。


「アホか。他の仕事やりつつ一人で調べたんだ。これくらいの時間じゃこれが限界だ」

「なんじゃ、監察使わなかったがか?」

「俺にも立場があるし、山崎は完全に奴の手にまんまと嵌ってやがる。説明した所で調べはしねェよ。それに、俺がお前等側の仲間と疑われれば、真選組が危なくなるだろ?近藤さんたちを危険な目に合わせるわけにはいかねェよ」


やはり土方にとって真選組が一番大事なのだろう。

「それで、来島。それだけってことはもっと調べてあんだろ?」

「勿論ッス!」


晋助に話しかけられて喜ぶまた子は嬉しそうに報告をする。



「土方が言った通り、天導衆は分裂してるみたいッスけど、幹部はソイツ……黒夜叉の考えの方が正しいと思ってるみたいッスけど、アインツとかいう奴に逆らうのが怖くてついているやつの方が多いみたいッスね」

「そのアインツって奴は腕っぷしが強い、とかそういう事?」

また子は銀時に訊かれて首を振る。

「それだけなら多分、晋助様や銀時様の方が強いッス!」

また子は自信満々にそう言った。


因みにまた子は、銀時の事を『様』付けで呼び、万斉は『銀時』と呼び捨てにして、晋助同様慕っている。


「じゃあ権力……とか?」



「それもちょっと違うッス。確かに権力は黒夜叉よりはるかにデカいッス。でも、アイツはとにかく頭がいいんッス」


「頭がいい?算数なら負けぬぞ!!」

「それならわしだって社会だったら負けないぜよ!」

「おいそこのバカ二人。ふざけてるとその頭ぶち抜くッスよ」


銀時と晋助の時とは打って変わり、小太郎や辰馬に対して酷く冷めていた。

晋助が「いいから早く言え」と言うと、また子は慌てて返事をしてまた報告をし始めた。



「つまり頭が良いっていうのは、勉強とかじゃなく、回転の速さというか、よく頭がきれるんッス。何をするにも的確で、何かあっても焦らずにすぐ対処する。嫌なものはすぐ排除。都合のいいようにどんどん物事を決める奴ッスけど、部下をまとめたり、説得させたりするのが得意で、それに賛成してしまうやつもいれば、逆らったらどうなるんだろうと怯える奴が中にはいるみたいッス」



そうなのか、と黒夜叉を見れば、黒夜叉は微かに頷いた。




     
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