気づいた時には……

□十五話 夜叉の真実
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 ―銀時―

 お前等と飲んだ日に、かぶき町で必ず辻斬りが起こったんだ。

その日だけじゃない。

 その前にも何回か辻斬りがあったんだ。

 狙われるのは、老若男女、職業もバラバラ。そこまではニュースでやっている。

 そしてある噂が流れた。『その犯人は銀髪の紅い瞳の鬼』だと。

 そんなの俺くらいしかいねェ。いたとしても2〜3人だ。

 だから、あの日。真選組が俺を捕まえに来たんだ。

「人ん家に大勢で上り込んで来て、何の用ですかコノヤロー」



「単刀直入に聞きまっさァ、旦那。アンタは辻斬りの犯人ですかィ?」



「「「……はぁ!?」」」

 その時は冗談かと思った。神楽や新八もいつも通り真選組をおちょくってたりしてたんだ。

 ……けど、沖田君の……真選組の目が本気だったんだ。

 真選組がいろいろ話し始めた。

 まず、その辻斬りにあった死体は必ず刃物で心臓を一突きにされていた事。傷口から刀だと分かったらしい。

 次にその犯人については、……さっき言った通り、俺の外見らしい。

目撃者によると白装束を着ていて、真っ赤な血を浴びても、ニヤリと不気味に笑っていたという。



 まさに鬼。



 その話を聞いて真選組は……いや、幕府は俺だと決めたらしい。

 将軍が決めたのか、他の奴が決めたかなんて知らねぇ。

 けど、俺は誰かに嵌められたと、そう感じたんだ。

「銀ちゃんがそんなことするわけないダロ!?」

「そうですよ!!それは銀さんじゃない!!」

 最初は新八も、神楽も、俺じゃないと言ってくれたんだ。それは嬉しかった。


 ……けど、近藤や山崎の言葉でおかしくなっていったんだ。

「だったら万事屋。お前は鬼でないと証明できるのか?」

「な、何言ってんだよ、鬼って。中二病か俺は!!」

「血を欲するあまり、人を、天人を殺し続けた貴方は、まさに鬼。人間とは言えない」

 神楽達の顔がどんどん変わり始めて、どこか混乱したような顔になってきたんだ。

「銀ちゃん……違うアルよね?銀ちゃんは……人間アル。ねぇ、そうデショ、銀ちゃん?」

「チャイナにメガネ、認めなせェ。俺達は旦那に――――この鬼に騙されたんでィ」

「う、うそだ!!銀さんは鬼なんかじゃない!ねぇ、何とか言ったらどうなんですか!!」

「「銀さん(ちゃん)!!」」

 俺はその時、答えてやることができなかったんだ。

 確かに俺は白夜叉と呼ばれていた。

 でも、もう鬼じゃない、自分は人間なんだ。


 そう、思ってたはずなのに。


「……銀、ちゃん……?」

「最近テメェ、どっかにフラフラ出かけてんだろ?どこに行っていた?」

「……あ?そんなのパチンコに――――」

「万事屋。この辺のパチンコ屋は夜中はやってねェ」

「隣町まで言ってたんですぅ。ってか何でそんな事聞くんだよ」

 近藤が辻斬りが起きた日を言って言ったんだ。

 その日はやっぱり俺等4人で飲む日だったんだ。しかも俺が朝に帰ろうとする時間に起こるんだ。

 偶然なわけねェだろ?こんな偶然あってたまるかって思ったんだ。


「……そう言えば、銀ちゃんその日全部朝帰りだったアル……」

「偶々に決まってんだろ?」

 新八たちが戸惑ってるところに、お妙が焦ったように走って入って来たんだ。

 その時は助けてくれるのかな、なんて少し思ったんだ。



 でも、お妙は新八と神楽を俺から遠ざけただけだったんだ。



「お……た…え?」

「間に合ってよかったわ。さ、逃げるわよ、新ちゃん、神楽ちゃん!!」

「に、逃げるって何処へ?」

 お妙がいつものように笑みを返してくれるわけでも無く、睨まれた。



「決まってるじゃない。貴方のような鬼から二人を助けるためよ!!」



    
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