気づいた時には……

□十二話 影も光
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 しばらくたつと、四人は次第に落ち着いてきて、すすり泣く音もやがて無くなっていった。

「泣き止みましたか?」

 四人は少し恥ずかしそうにしながらも、頷く。

「随分と、大きくなりましたね。見ないうちに変わりましたね」

 松陽は笑った。

が、その笑みは少し黒かった。

「特に晋助。その左目はどうしたんですか?」

 ぎくりと肩を震わせ、ボソッと「斬られた」と言った。

「誰にですか?」

「…………アイツ」


 晋助の見た先にいたのは黒夜叉。


「くーろーやーしゃーさーん?」


「「「「……黒夜叉『さん』?」」」」

 松陽が黒夜叉の方を向き、ニコリと黒く笑うと、黒夜叉の顔が引きつった。

「ま、まて!こ、これには事情が……」

「私の可愛い教え子たちにあれほど傷つけたら許さないと言ったはずですが?」

「話をまず聞け!そして落ち着け!」

「これが落ち着いてられますか!!」

 うがーっと言う、松陽に、黒夜叉がもの凄く焦っている。

その姿が違和感がありまくりだった。

「「「「……どういう事?」」」」

 黒夜叉は「はぁ。もういいか」と言った。



 その瞬間、黒夜叉が眼にもとまらぬ速さで刀を抜き、晋助に斬りかかった。

呆然と見ていた晋助はそれに反応が遅れ、対処できなかった。

気付けばもう、黒夜叉は刀をふり降ろいしていた。

「し、晋助!!」



 叫んだ時、地面に落ちたのは晋助の血
















ではなく、巻かれていた包帯。

「へ?」

 はらりと落ちた包帯の下には、戦争中に黒夜叉によってつけられた傷がなかった。

それに、

「っ!!」

 眩しそうに顔をしかめた晋助の左目の瞳の色が、濁った色ではなく、右目と同じ綺麗な色をしていた。

「お、おい。晋助、その目……」

「あ?……は?」

 晋助はきょろきょろと辺りを見わたし、右目を手で軽く押さえ、もう片方の手を前にだし、振ったり、ピースしたり何かしていた。





「左目が……直った?」




「「「なっ!?」」」

 四人は驚きを隠せなかった。

どこの医者に診てもらっても「諦めろ」と言われ続けた左目が、今の一瞬で直ったなど、ありえなかった。

「ど、どうなってやがんだ?」

「『直った』のではない。正確には『元に戻した』のだ」

「元に戻した?」




「貴様の左目は、もとから失ってなどおらん」




「「「「……はぁぁぁぁぁぁ!?!?」」」」

「その前に晋助は失明してたんですか!?」

 それぞれ思う所が違い、黒夜叉は小さくため息をついた。

「『奴等』を欺くためには、誰かを傷つける必要があったのだ。だが、アイツがああなのでな。やむを得ず、幻術を使う事となった」

 黒夜叉がちらりと見ると、松陽は「当たり前です!」と言った。

「どんな理由であろうと、この子達(特に銀時)に手を出すことは許しません!」

「……先生、そのカッコはいりますか?」

 小太郎は呆れたように言いながらも、少し嬉しそうだった。

「とゆうことは晋助の左目はおんしの幻術によるもがやき、まっことは失明しておらんということながやき?」

「……?」

「あー、直訳するとだな。『という事は晋助の左目はお前の幻術によるもので、本当は失明していないということなの?』ってことだ」

 銀時が丁寧に言うと、黒夜叉は「あぁ」と言った。

「ってことは、俺はコイツに何年も騙されてたってことか……?」

「……そういう、事だな」

 晋助達は何とも言えない顔をしていたが、銀時だけはフッと顔を緩ませた。

「よ、かった……。もう、晋助の目、あってよかった……!」

 あの時一緒にいたのは銀時。

それで銀時は晋助が眼を失ったのは自分の所為だと攻め続けていた。

その荷がようやく、今日おりた。

「良かったな、晋助」

「……あぁ」

 晋助は左目にそっと触れ、嬉しそうに言った。
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