気づいた時には……
□十一話 太陽と再び
1ページ/3ページ
「久しぶりだな、仔鬼ども」
「黒夜叉…………!!」
黒夜叉はニヤリと笑った。
晋助と銀時はもの凄い殺気をむけ、睨みつけた。
「……貴様が、先生を連れ去り、晋助の左目を奪った黒夜叉か!!」
小太郎と辰馬は初めて会う。
怒りはあっても、会ったことはなかったのだ。
「貴様たち二人は初めてか。あぁ、そうだ。我は天導衆の一人である黒夜叉だ」
「……ノコノコとやって来るたァ、いい度胸じゃねェか」
小太郎と辰馬も黒夜叉に殺気をビンビン飛ばす。
それでも黒夜叉はそれに平然としていた。
「テメェ、何しにきやがった。人ん家はいる時はまずインターホン押せって母ちゃんに習わなかったか?不法侵入で警察に訴えるぞコノヤロー」
「人間の警察ごときが我の事を逮捕できるわけないだろう?」
黒夜叉はククッと笑う。
「何の用かのう?銀時に手を出そうとゆうならば、速攻おんしを斬るぜよ」
辰馬が言うと黒夜叉は「威勢のいい奴だ」と言った。
「もう貴様らの耳にも届いているはずだ。吉田 松陽のことを」
「「「「!?!?」」」」
四人は驚く。
そう簡単に言って良いものか、と。
「……先生をどうするつもりだ?」
「松陽にはまだ何もしておらん。まだ、な」
「……ムカつく野郎だなァ。いっそのことその口、一生しゃべれねェようにしてやろうかァ?」
晋助が刀に手を添える。
すると黒夜叉はフハハッと笑った。
「まだもがき、抗い続けるか童(わっぱ)ども!面白い!ならばどこまで我らに抵抗し、貴様らにとっての師の存在はどれほどのものだったか、貴様らの強さがどれ程のものか、見せてもらおうではないか!」
黒夜叉はそういうと丁寧に四つ折りにしてある一枚の紙を投げた。
「そこで待っている。もちろん松陽もな。だが、あまりに遅いと松陽がどうなるか」
「なっ!?」
「貴様ァ!!」
「あぁ、もう一つ。絶対に貴様ら四人で来い。もしそれ以外のものを連れてきた場合……」
黒夜叉はにやりと笑った。
「わかっているな?」
黒夜叉は「じゃあな、最後の英雄たちよ」といって去っていこうとした。
「待ちやがれっ!!」
晋助が追いかけ、黒夜叉に刀を振り落した。
「!?」
だが、切った手ごたえなく、黒夜叉が霧のようにすぅっと消えていった。
「どういうことだ、今の……?」
「消えた……?」
「……っ!クソッ!」
晋助が黒夜叉を取り逃がしたことがよほど悔しかったのか、刀を地面に叩きつけた。
「晋助……」
「およ?さっきの……」
「どうした、辰馬?」
辰馬はうーん、と考え出した。
「さっきの光景、どっかで見たことがあるような気がするぜよ」
「何?それは本当か」
「どっかの天人と商売しちょるときに、あがなが(あんなもの)を見た気がするぜよ……。なんてゆうてたかのう」
辰馬は少し考えた後、あっ!と大きな声を出した。
「たしか高貴な天人なら、幻覚くらいこたう(できる)とかゆうてたぜよ」
「幻覚だァ?」
「おいおい、もうそれ人間じゃねェよ」
「天人はもとから人ではないぞ、銀時」
銀時が顔をしかめて、少しふざけると小太郎に突っ込まれた。
晋助は辰馬が頭がいかれてしまったのかと少し疑う。
「……辰馬。悪いことァ言わねェ。今すぐ病院行って来い」
「あはは、晋助、いきなりどうしたが?わしはいたって健康ちや」
「晋助の言う通りだぜ。そん事があんなら松陽先生の事だって……あ」
もしかしたら松陽の首も幻想?
だとしたら―――――。
「辰馬の言う通りかもしれん。その方が今までの事がつじつまが合う」
「だったら、速く確かめに行こうぜ」
晋助の言葉に三人は頷いた。
黒夜叉のおいていった紙には地図が描いてあった。
そこに行くためにまずは編笠を被り、分からないようにした。
そして出発する。