気づいた時には……

□十一話 太陽と再び
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「久しぶりだな、仔鬼ども」

「黒夜叉…………!!」

黒夜叉はニヤリと笑った。

晋助と銀時はもの凄い殺気をむけ、睨みつけた。

「……貴様が、先生を連れ去り、晋助の左目を奪った黒夜叉か!!」

 小太郎と辰馬は初めて会う。

怒りはあっても、会ったことはなかったのだ。

「貴様たち二人は初めてか。あぁ、そうだ。我は天導衆の一人である黒夜叉だ」

「……ノコノコとやって来るたァ、いい度胸じゃねェか」

 小太郎と辰馬も黒夜叉に殺気をビンビン飛ばす。

それでも黒夜叉はそれに平然としていた。

「テメェ、何しにきやがった。人ん家はいる時はまずインターホン押せって母ちゃんに習わなかったか?不法侵入で警察に訴えるぞコノヤロー」

「人間の警察ごときが我の事を逮捕できるわけないだろう?」

 黒夜叉はククッと笑う。

「何の用かのう?銀時に手を出そうとゆうならば、速攻おんしを斬るぜよ」

 辰馬が言うと黒夜叉は「威勢のいい奴だ」と言った。

「もう貴様らの耳にも届いているはずだ。吉田 松陽のことを」

「「「「!?!?」」」」

 四人は驚く。

 そう簡単に言って良いものか、と。

「……先生をどうするつもりだ?」

「松陽にはまだ何もしておらん。まだ、な」

「……ムカつく野郎だなァ。いっそのことその口、一生しゃべれねェようにしてやろうかァ?」

 晋助が刀に手を添える。

 すると黒夜叉はフハハッと笑った。

「まだもがき、抗い続けるか童(わっぱ)ども!面白い!ならばどこまで我らに抵抗し、貴様らにとっての師の存在はどれほどのものだったか、貴様らの強さがどれ程のものか、見せてもらおうではないか!」

 黒夜叉はそういうと丁寧に四つ折りにしてある一枚の紙を投げた。

「そこで待っている。もちろん松陽もな。だが、あまりに遅いと松陽がどうなるか」

「なっ!?」

「貴様ァ!!」

「あぁ、もう一つ。絶対に貴様ら四人で来い。もしそれ以外のものを連れてきた場合……」

 黒夜叉はにやりと笑った。





「わかっているな?」




 黒夜叉は「じゃあな、最後の英雄たちよ」といって去っていこうとした。

「待ちやがれっ!!」

 晋助が追いかけ、黒夜叉に刀を振り落した。



「!?」




 だが、切った手ごたえなく、黒夜叉が霧のようにすぅっと消えていった。






「どういうことだ、今の……?」

「消えた……?」



「……っ!クソッ!」

 晋助が黒夜叉を取り逃がしたことがよほど悔しかったのか、刀を地面に叩きつけた。

「晋助……」

「およ?さっきの……」

「どうした、辰馬?」

 辰馬はうーん、と考え出した。

「さっきの光景、どっかで見たことがあるような気がするぜよ」

「何?それは本当か」

「どっかの天人と商売しちょるときに、あがなが(あんなもの)を見た気がするぜよ……。なんてゆうてたかのう」

 辰馬は少し考えた後、あっ!と大きな声を出した。




「たしか高貴な天人なら、幻覚くらいこたう(できる)とかゆうてたぜよ」








「幻覚だァ?」


「おいおい、もうそれ人間じゃねェよ」

「天人はもとから人ではないぞ、銀時」

 銀時が顔をしかめて、少しふざけると小太郎に突っ込まれた。

 晋助は辰馬が頭がいかれてしまったのかと少し疑う。




「……辰馬。悪いことァ言わねェ。今すぐ病院行って来い」






「あはは、晋助、いきなりどうしたが?わしはいたって健康ちや」

「晋助の言う通りだぜ。そん事があんなら松陽先生の事だって……あ」



 もしかしたら松陽の首も幻想?

 だとしたら―――――。





「辰馬の言う通りかもしれん。その方が今までの事がつじつまが合う」

「だったら、速く確かめに行こうぜ」

 晋助の言葉に三人は頷いた。

 黒夜叉のおいていった紙には地図が描いてあった。

 そこに行くためにまずは編笠を被り、分からないようにした。







 そして出発する。



   
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