気づいた時には……

□七話 三つの明かり
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「「「この馬鹿銀時が!」」」



「小太郎!晋助!辰馬!」

 銀時はとても驚いている様子で言った。

「なんでお前等……」

 銀時がそう言うと三人は後ろを向いて銀時に近づき、三人で銀時の頭に一発ずつ拳骨をくらわす。

「いっ!?」

 銀時は頭を押さえてうずくまった。

「な、なにすんだよ!」

「なんで?それはこっちのセリフだ、大馬鹿者!」
 小太郎が怒る。

「貴様は何故真剣を持っている!?何故こんな所にいる!?何故人を斬った!?」

 銀時は面を喰らったような顔をしていたが、ハハッと笑い出した。

「俺が何処にいようと、何をしようと、お前等には関係ねェ。それに俺は鬼だ。人を斬るのが



 鬼ってもんだろ?」


 三人は顔を歪ませる。

 なんという壊れ方をしたのだろう?

 攘夷時代の時でさえここまでじゃなかったのに、幼い頃と同じだ。

 殺すのが当たり前、己は鬼だと思っている。決して自分を人間だとは認めない。

 姿も昔のようだった。

 銀時は無表情で、刀を持っており、全身血だらけだった。

 何も感情は無く、ただ殺して、生きる事しか考えていない。

 だが今回は昔とは少し違った。

 昔は元から戦場にいた為そこまでじゃなかったし、襲いかかれば斬ろうとした。

 自分の身を護るために。

 今回は居場所を失い、彷徨い、裏切られ、誰も助けてはくれず、心がズタズタになっていた。

 そして襲いかかるものを、元、仲間たちを殺そうとはしなかった。

 いくら殴ったって、殺しはしなかった。

 だから銀時はまだ『人間』という自覚が少しあるのだ。

 多分、今は振りをしている。

 己は鬼である、と。

 なら話は簡単だ。

「銀時、お前は鬼なんかじゃないさ」

 銀時が眼を見開く。

「だからもう止めて俺達と来い」

「わしらは、銀時の味方ぜよ」

 三人がそう言うと、銀時は顔を歪めた。

「……違う。俺は鬼。皆を傷つける事しか出来ない、殺す事しか出来ない。護ることさえもできない鬼。殺人の鬼。見ろよこの様」

 三人はあたりを見た。

 すると、ほとんどが銀時を憎しみ、恐怖の目で見ている。

 仲間という意識を持っているものが少ない。

「俺は壊すんだよ。何もかも」

 すると晋助が「おい」と言った。

「銀時、テメェ俺の真似してんじゃねェよ」

「あ?誰が人間の真似なんざするかよ」

 銀時は晋助を睨んだ。小太郎はフッと笑った。

「確かにな。晋助と同じではないか『俺は壊すだけだ。この腐った世界を』ってやつにな」

「似てねェよ。お前がやるとウゼェ」

「貴様の真似をしただけだ」

「アハハハハ〜、意外と似てたぜよ」

「てめ、辰馬!どう見たって似てねェだろーが!」

「事実を言ったまでだ」

 三人は低レベルな喧嘩をしていて、皆驚く。なんせ1人は過激攘夷志士、高杉 晋助なのだから。

「おい三人!早くそこをどきやがれ!そして桂と高杉は大人しく捕まれ!」

「誰が捕まるか!幕府の狗め!この『逃げの小太郎』捕まえて見よ!ハーハッハッハー!」

「黙れヅラ」

「ヅラじゃない、桂だ!」

「テメェ等早くどきなせェ。その鬼をやるのは俺でィ」

 すると三人の肩がピクリと動く。そして沖田を睨む。

「……おい、幕府の狗、今銀時の事を何と言った?」

「白夜叉の事かィ?鬼って言いやしたけど?」

 三人は沖田の方を向いた。

「貴様、本当にそうだと思っているのか?」

「鬼に鬼って言って何が悪いんでさァ」

 すると小太郎は刀を沖田に向けると、一瞬でその場から消えた。

 いつの間にか金属同士がぶつかり合う甲高い音が響いた。

 小太郎と沖田だった。

 小太郎の動きについていけたのは銀時、晋助、辰馬、そしてギリギリで沖田。

 他の人は何が起こったかさっぱりで、小太郎の動きなど見えなかった。

「貴様、もう一度聞く。本当に銀時を鬼だと思っているのか?」

「何でそんな事を聞くんでさァ。白夜叉は鬼。鬼を庇う必要はねェ」

「……失望した」

「は?」

 小太郎は沖田を睨む。


「貴様に失望したと言っているんだ、沖田!!」

 小太郎は刀の柄の部分で沖田の腹部を殴った。

 沖田は「うっ」と呻いて、飛ばされる。

 後ろにいた隊士も巻き添えをくらった。

「ちょ、桂さん、止めてください!」

 新八が慌てて止めに入ろうとするが、小太郎の元へは行けなかった。

 何故なら晋助が邪魔をしたからだ。

「……高杉さん、どいてください」

「どかねェ。俺もテメェに用があるからなァ」

 新八は少し警戒しつつも、「何ですか?」と言った。

 新八がこんなに警戒するのは紅桜編の事件があるからだ。

「テメェは銀時の事どう思ってやがる?」

 晋助は新八の首元に刀をあてた。

 新八は少し恐怖に襲われながらも、答えた。

「……沖田さんと一緒です」

「そうか。テメェもそう思ってんだな?じゃああの事は本当だったって事か」

「あの事……?」

「テメェ、銀時の事を信じなかったそうだなァ?」

「信じる?どうして僕が鬼なんかを信じなくちゃいけないんですか」

 すると晋助は殺気を放つ。

「どうして、だァ?テメェ、銀時の家族じゃなかったのか?」

「あ、あんな人ともう家族なわけないでしょう!」

「……俺達はなァ、テメェ等に銀時を任せたんだよ。何でか解るかァ?」

 新八は怯えながらも首を横に振った。

「それはなァ、銀時とテメェ等が家族だと思ったからだ!一緒に笑ってる銀時が楽しそうだったからだ!テメェ等の話をしている銀時は嬉しそうだったんだ!なのになんだこの様は!テメェ等馬鹿かァ?銀時はテメェ等の事を最後まで信じたんだ!なのにテメェ等は銀時の気も知らねェで…………!」


「晋助、それ以上言うんじゃねェ」


 晋助を止めたのは銀時だった。

「俺は鬼だって言っただろ?そいつ等が言ってる事は間違っちゃいねェ」

「銀時……」


 晋助は少し悲しそうな顔をした。




 
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