気づいた時には……

□四話 敵として
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 キィィィィィィィィィィン!!





「久しぶりですねィ、白夜叉」






 そう言って斬りかかって来たのは真選組の沖田だった。

「よォ。俺と殺り合いに来たってか?」

「そんな所でィ。俺も一応警察なんで」

「サボり魔が良く言う」

 沖田と銀時は距離をとる。

「御用改めである!真選組だ!巻き込まれたくなけりゃ近寄んな!」

 その後ろから土方達が来た。

 真選組の半数はいるだろう。

 土方の横には新八と神楽もいた。

「何の用じゃ真選組。勝手に吉原に入りおって」

「勝手じゃねェ。この鬼捕まえるためだったら、

 何しても良いって幕府から命が下ってんだよ」



「なっ!?」


 銀時を捕まえるためだったら何しても良い、なんてことがあるのだろうか?

 しかも銀時の事を鬼と言った。

 真選組は銀時の仲間ではなかったのだろうか?

「一人の為に皆で捕まえようって?ひ弱だなァテメェ等」

「テメェみたいな凶悪な鬼を捕まえるのに誰も一人じゃ捕まえられねェよ」

「凶悪な鬼……ねぇ?」

 銀時はまた、クツクツと不気味に笑った。また鬼となった。

「お前等じゃむりだ」

「なんだと?」

「俺を止められるのはそうだなぁ……。晋助らへんならいけるんじゃねェか?」

「高杉の事か?はっ。誰が敵に敵を倒してくれ、何て言うかよ」

「(ボソッ)……敵、か……そりゃそうだよな」

「あ?テメェ何か―――」

 土方が言い終わる前に銀時は素早く動いた。

 そして日輪の首筋に刀を当てた。人質にとったのだ。

「「「日輪(様)!?」」」

「じゃあその敵は人質をとる。流石に日輪を危険の身にはさらせねぇよな?」


「日輪を放すアル!」

「日輪さんから離れろ!」


 すると銀時は小さく日輪に「悪ィ」と言うと更に刀を近づけた。

 銀時が少しでも体を動かせば、日輪の首が飛ぶ。

 だが日輪にだけは分かった。

 銀時は迷っている。

 日輪を本当は殺そうなどと思っていなかった。

 だって今謝った。

 何故人質に謝る?

 それはまだ銀時が日輪を大切に想ってくれているから。


「……銀さん」


「話しかけんじゃねェ」
 日輪たちの声は皆には聞こえてない。

 だから日輪は今まで通りに話した。

 銀時を無視して。


「アンタ、あたしにさっきこういったね。
 『人殺しに酌なんざしようとする花魁は初めてだ』って。

 じゃああたしも言わせてもらおうか。
 人質に謝る人は初めてだ、って」

 日輪は少しクスリと笑った。

「何があったかは知らない。けどね銀さん。あたしと月詠は信じるからね」

「……さっきのアイツらの話聞いてたか?俺は凶悪n「アンタはアンタだよ」!?」

「銀さんこそ月詠の話聞いてたのかい?アンタは吉原の救世主様なんだよ。

 それにね、あたしが一番助けられたのにその恩人を嫌うなんて事しないよ」

「日輪……」

 銀時の気が少しだけ緩んだ。

「……俺ァなァ日輪」

 銀時は日輪の耳元で小さく呟いた。







「          、     」









「!?銀さん!?」

「月詠たちに言うんじゃねェぞ。言ったら意味がねェ」

「まさかこれって……」

 銀時は日輪が何か言おうとしているのを遮った。

「日輪、信じてくれてありがとな」

 その声は前のように穏やかで優しかった。


「いい加減日輪から離れるヨロシ!!」


 神楽も銀時に襲いかかる。

 銀時は片手は刀を持っているため、もう片方の手で神楽の傘を軽々と受け止めた。

 もちろん、日輪には傷一つつけていない。

「あれ?お前、怪我はもう良いのか?」

「あんな怪我すぐに治ったアル!この通りぴんぴんしてるネ!バカじゃないアルか?夜兎の力、なめんなヨ!」

「ふーん、あっそ」

 神楽はその後距離をとったため聞こえなかったが、日輪には聞こえてしまった。

 銀時の本音が。


 銀時は言った。





 「良かった」と。





「あの時はお前にやられたけど、今度はやられないアルよ!あの時の恨み、晴らしてやるネ!







  白夜叉!」
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